ロサンゼルス

僕はロサンゼルスの空が好きだ。
絵の具の「水色」をそのまま塗ったような屈託のない色。
心地よい温度と湿度。
IMG_5739

かわいた風をからませ、あなたを連れて行きたくなる(笑)

前々回に「重度のアメリカかぶれをしていた自分」と書いたが、もちろんこの西海岸の気候が及ぼした影響は計り知れず大きい。

日本のジメジメした夏季と静電気に悩まされる乾燥した冬季と比べると、一年中それほど変わらない天候と滅多に雨の降らないロサンゼルスは、ここにいるだけで明るい性格になれるのでは?と思ってしまうほどだ。


ところでロサンゼルスといえばハリウッド。ハリウッドといえば映画の街だが、なぜハリウッドが映画の街になったかご存知だろうか?

答えはやはりこの気候にあって、「雨が降らないから」が一番の理由だそうだ。
機械を使って人工的な雨を降らすことはできても降ってる雨を止ませる方法はない。
また天候の変化が激しいとそれだけで映画の中のシーンのつながりが不自然になりやすくなる。
つまり気候があまり変化しないということは、それだけで街全体がスタジオのような特性を備えているということになるのだ。

実際ロサンゼルスの街を車で走っていると、そこかしこで映画の撮影が行われている。
ハリウッドのユニバーサルスタジオのみ本当の撮影スタジオが併設されているというよりは、元々撮影スタジオをお客さんに開放して見学できるツアーがそもそもの始まりだったという話は以前にも書いた。

そして映画は撮影するだけでは完成しない。
当然映画の街にはミュージシャンも必要になればスチールカメラマンも必要になる。
スタイリストやメイクアップ等、映画にまつわるあらゆる職業が集結していく。

こうしてショービジネスの街が時間をかけて出来上がっていったのだ。

来れば来るほどに好きになるロサンゼルス。
僕は一時期かなり真剣にこちらに住む術はないものか?と画策したことがあった。
一念発起して移住した音楽関係の人は当時僕の周辺にも結構いた。
今でも一線でバリバリ働いているエンジニアの方もいるが、僕は結局踏み切ることができなかった。

理由はシンプルだ。
26歳の頃、二つ目の事務所を辞めて完全フリーになった。
それはすなわち仕事がなんとか軌道に乗り始めたことを意味する。
そして最初に来た仕事がロサンゼルスレコーディングであり、見事なまでにアメリカにハマってしまったわけだ。
もうこちらに住むしかない!
留学ビザをとって英語学校に通って…とイメージを頭に思い描く。
だがどうしてもイメージが先に進まない。

収入はどうする?
仕事はどうする?

逆に言えば、これまで頑張ってきたからこそロサンゼルスに来られたとも言える。
ようやくカタチになり始めた仕事を全部放り投げてしまってよいのか?

自問自答はそう長くは続かなかった。
僕は結局アメリカ行きを早々に断念し仕事を継続することにした。

今でも時々思うことはある。
「あの時深く考えずに勢いでアメリカに行ったとしたら…」と妄想する。
もしかしたら案外順調に英語も短期間で覚えられて仕事のキッカケをもっと増やすことができたかもしれない。
その選択肢の先の未来は今よりも輝いていたかもしれない。

だけどもこうも思う。
もしそっちを選んでいたら、ゴスペラーズのデビューを手伝うこともなく担当ディレクターに会うこともなくラルクを紹介されることもなくハイド君に会うこともなくVAMPSのサポートをやることはもちろんなくということは今これを書いていることもなければ当然あなたがこのブログを読んでいることもなかっただろうと。

そう考えると、人生というものは無数の可能性と選択肢と分岐点を経て成り立っていることがわかる。
一切のやり直しのきかないわらしべ長者のようでもあるし、常に綱渡りをしているようなギリギリ感もある。

もしも人生をやり直せることができたら?

よくあるお題ではあるが、もし本当に20年前に戻ってしまったとしたら…それはそれでかなりの恐怖になるだろう。
自分の知ってる未来に持っていくことがとても困難なことになるだろうし、間違っていたと思っていた選択肢と違う方向がもっと間違っていたなんてことも当然起こり得る。
あるいは今までは「成り行き」だと思ってなんの苦もなく得られていたことが、どんなに努力してもモノにできないといった“もどかしい”こともきっと起こるだろう。
将来会うべき人にどうやっても巡り会えなくなってしまうかもしれない。

もしも神様に「どう?やり直す権利あるけど?」と聞かれたら…
あなたならどうするだろうか?

話が大きくなった。
20代の頃の情念の詰まった街なので、思うことも大きくなるようだ(照)

ロサンゼルスの街並みも最初に来た頃から随分と変わった。
観光産業の形態が随分変わってきたように思えるし、ビバリーセンターのテナントもすっかり入れ替わった。
どのショッピングモールもブランドショップとファストファッション、ルイヴィトンとユニクロが同居している感じで個性がない。
楽器屋は激減し日本のシャッター通りのような現象がこちらでも起こっている。
1日5ドルで停められたホテルの駐車場は40ドルに値上がりし、ハンバーガー屋のコンボも10ドルが当たり前。とにかく物価が高い。

今のロサンゼルスに初めて来たとしたら、あの時とはまた違う印象や感情を抱くかもしれない。


しかしそれでも僕はロサンゼルスの空が好きだ。
絵の具の「水色」をそのまま塗ったような屈託のない色。
心地よい温度と湿度。

それだけはずっと変わらないのだろう。
IMG_7080