プラグドとアンプラグド

MTVアンプラグド終了。

年末の富良野から約一ヶ月、再びアコースティックコンサートであったわけだが、やはり慣れていない環境でのライヴとなると百戦錬磨のチームVAMPSも一筋縄ではいかない。

今回のアンプラグド、後にオンエアーやDVD化される映像に映るであろう「各メンバーのいつもとは違う緊張感いっぱいの表情」を楽しむのも見所の一つとなるのではないだろうか。
……と他人事のように書いてはみたが、富良野での緊張感を頭に蘇らせるだけで身の引き締まる思いのする自分である。当然ヒトゴトではない(笑)


ところでアンプラグドとはアン プラグド、つまり電源を極力使わない演奏、音楽という意味である。
MTVの登録商標なんだそうで、MTV以外がこの言葉を使う場合は「プラグレス」という呼び方で逃げるらしいが、商標になるだけあってアンプラグドという言葉、とにかく語感がイカしている。

しかし一切の電源を使わずにライヴをすることはほぼ不可能で、最低限とは言いつつそれなりの数がプラグドされているのが実情だ(笑)
また意味合いとしても、電源や回線を使わないというよりは電子楽器、あるいはシーケンスやクリックを使わないという定義の方が近いようにも思う。
「アンクリックド」や「アンシーケンスド」が正しいようにも思うのだが、仮に僕がこれらを商標登録したところで誰も使ってくれないだろうからしない(笑)


VAMPSが始まる前の2006年頃のライヴ現場全般はまだシーケンスの分量はそこまで多くはなかったのだが、ここわずか10年の間でかなりの浸透率で広まっていったように思う。
(シーケンスとはステージの演奏者以外の演奏パートを補うカタチでコンピューター等を使って同期させる手法の総称。電子楽器を自動演奏させる「シーケンサー」が由来。
DAW…DigitalAudioWorkstationの進化によって現在はかなりのパート数であっても余裕で出力することができる)

パソコンの進化、コンパクト化や専用アプリケーションの台頭に加えて、イヤモニによる安定したモニタリングシステムの確立など、シーケンスに限らずコンサートの音そのものが複合的かつ劇的に進化した10年だったと言えるだろう。

CDに収録された音がライヴでは再現できないといったこともなくなり、100人のコーラスであろうがフルオーケストラであろうが、レコーディングで録られたクオリティそのままの音で表現できることが当たり前となった。
しかしかつてはCDの音とライヴの音が違うのが当たり前であったし、むしろその違いが大きいほどファンとして歓びを感じたりする場合も多々あったように思う。

録音した音をそのまま出すだけで良いものなんだろうか?

そういった「供給過多気味のシーケンス事情」を根本から見直し、「音の増幅を極力させずに演奏者の演奏だけで表現する音楽」に退行させる流れが起こるのも自然の流れのように思ったりもする。

VAMPSが今後アンプラグド方面に傾倒するといったことはまずないとは思うが、「アナザーバージョン」としての今回のような特別イベントとなれば話は別、参加することができてとても嬉しい思いである。

(※尚、VAMPSのシーケンスはもちろんCDと同じ音で出しているパートもあるが、多くのパートはライヴ用に音を加工し直したり、逆にCDで施した加工を全部外してみたり、あるいは場合によっては録音や演奏をやり直したりもしている。また昔の曲は新たなパートを加えたり演奏パートを追加したり変更したりといった進化も続けている)

64倍の倍率を勝ち抜いたという300人の観客と10数台のカメラ。
演奏者は14人。
VAMPSの2人にサポートの我々3人まではいつもの編成。
これにピアノ、パーカッション、アコースティックギター、
さらに女性コーラス2人と弦カルテット4人という構成である。

普段のほぼ3倍の人数だが、奏でる音量はいつもの10分の1ぐらいだろうか?(笑)
小さな音を基準とするために大きな音のドラムはブラシやロッズと呼ばれるスティックで音量を下げる。
今回ベースはエレクトリックだったが、小さな小さなベースアンプに繋いでいた。
やや反則のような気もしたが僕はいつも使っているシンセサイザーを使った。
(限りなくアコースティックサウンドに限定したが(笑))

機械らしい機械を使わずに人力のみでやる演奏。
見ているお客さんにしてみればそこまでの違和感はないのかもしれないが、現代技術を駆使して演奏することに慣れている我々からするとやはり特別な雰囲気だ。

クリックなしの演奏ひとつとってみても、自分がテンポマスターとなり他のパートを引っ張るといった経験を長らくしていなかったので、相当の反復練習を必要とした。

そういったことを富良野で一足先に痛感していた僕ではあったが、今回他のメンバーもそれぞれに感じたことだったようだ。

クリックを聞かずにみんなでキッチリ演奏する。
かつては当たり前であったはずだし、アマチュアの頃はクリックに合わせることの方が難しかったはずなのに、今はクリックがない方がむしろ難しく感じてしまう……

しかしこれは今のVAMPSに必要な経験なのかもしれない。
もしかしたら何かが一皮剥けるようなヒントになるかもしれない。

リハの初日が終わった時にK.A.Z氏はそう思ったそうだ。


ディープな内容になりそうな予感をヒシヒシと感じつつ…
次回「機械と人間」につづく。