銭形平次とデスノート

元々脱線気味のブログではあったが、いよいよ謎の表題のエントリーをしてみる(笑)
 
自分としては何年も前から思っていたことでいつか誰かに話したいと思っており、実際何度か仲間内には小出しに会話としてしたことはあるのだけれども、なかなか真意を伝えることができずいつもシリツボミになってしまっていた。
 
ああ!誰かとこの思いを共有したい!
 
という熱い思いを今日はブログというツールを使って思う存分一方的に伝えてみたいと思う(笑)
 

「デスノート」というマンガについては、かなり有名なマンガであるし、つい最近テレビドラマ化もされ、さらには続編映画の公開日決定もつい先日あったりし、ご存知の方も多いかと思われる。
 
Death_Note
 
「このノートに名前を書かれた人間は死ぬ」
 
死神の持つべきデスノートを手にした高校生・夜神 月(ライト)が、このノートを使って次々と完全犯罪を成立させていく。
なにしろ名前を書くだけで人が死んでしまうのだから、犯人の特定は不可能としか思えない。
だが何の物証を残していないにも関わらず、かなりの短期間でライトに行き着く天才探偵エル。
お互いの挑発に乗りながらも決して手の内を明かさず、常に数手先の勝負を畳み掛け続ける物語がどうにも痛快であった。
デスノートは大きく前後編に分かれるが、探偵エルとライトの心理戦が中心となる前編が圧倒的に面白かった。
 
 

一方の銭形平次だが、こちらも知らない人はいないであろう有名な時代劇だ。
デスノート以上に説明不要のポピュラーな作品かと思われる。
 
maxresdefault
 
えーと、明確なビジョンは思いつくし歴代の平次さんを知っているにも関わらず、説明するほど熟知しているわけでもファンでもないのでここは割愛(笑)
でもまぁ日本国民で知らない人もあまりいないだろう。 
 

しかしそれにしても、なぜ銭形平次とデスノート?
「???」と思う方も多いかと思われる。
 
 
この二つの作品、あまりに違いすぎる作品かのように思えるのだが、最近僕の中では「既に同じカテゴリーに入ったのかな」と思えるようになってきた。
 
 
時は200年程前の江戸時代。
DNA鑑定はおろか、犯人の遺留品や指紋など、現代捜査と比べてしまうとあまりに決め手となる物証がなさすぎる時代。
それをいいことに下手人は大胆に犯行をやってのけ知らぬ存ぜぬとシラを切り通す。
「あぁ今なら指紋鑑定で一発なのに!」
我々としては「志村うしろ〜!」的な歯がゆさのようなものを感じざるを得ない。
 
しかしデスノートにしても、既にこの領域に達してきているように思えてしまうのだ。
エルがそこまで頭が良くなくても、ここ10年の技術革新で当時の夜神月は速攻で逮捕されていただろうからだ。
 
というのもここ最近の犯罪の立証パターンを見ていると、とにかく防犯カメラがいい仕事をしているんである。
多くの犯罪(特に都市部での犯罪)は、防犯カメラ映像だけで容疑者の行動を抜き出し、かなりの短時間でアリバイを断定できてしまうらしい。
 
夜神月の行動に関してだと、エルがいなくともおそらくは1巻の後半〜2巻の前半のレイ・ペンバー氏を山手線に誘導する時点でお縄だろう。
フードを深く被った程度の変装で防犯カメラをクリアーすることはできない。
本編マンガの中でも「防犯カメラ映像確認」という描写はあるが、もはや刑事さんや探偵がビデオテープを肉眼で一本一本確認するようなチープなシステムではないのだ。
 

現代の防犯カメラ映像確認システムは、
犯罪が起こった周辺の防犯カメラ映像を全部集め→
犯行時間近辺に現場にいた人間をピックアップし→
コンピューターがその人たちの行動のすべてを監視カメラの中から識別し→
その人たちの行動を過去に向かってさかのぼり徹底的に追跡、
ができてしまうそうなのだ。
 
カメラに映った犯行を起点に、その犯行で使った凶器を準備しているであろうトイレに入る瞬間であるとか、さらにその一週間前に金物屋で出刃包丁を購入した前後の足取りなど、過去の映像がワサワサ時系列に沿ってつなぎ合わせるように出てくるという魔法のようなシステムだ。
 
その追跡可能期間は今のところ過去3ヶ月らしい。
 
今後防犯カメラが増えれば増えるほど精度は上がり、記録媒体はさらに過去まで遡れるようになるのだろう。
容疑者候補になった時点で過去3ヶ月の行動が逆算的に浮かび上がってきてしまう。
 
これはもう既にタイムマシーンの一種といえるのではないだろうか?
 

例えば全国の郵便ポストに防犯カメラを設置したとする。
そうするだけで今後は「投函による愉快犯の犯行声明」が成立しなくなってしまうことになるのだろう。
ポストの場所と投函された時間がわかった時点で実に簡単に犯人を絞り込めるということになるからだ。
全国数万ケ所全てのポストにカメラを設置することは不可能とはいえ、オービス(自動速度超過違反取締装置)のように大部分がダミーであっても相当の抑止力になってくれそうである。
 
ちょっと前に携帯電話の番号通知システムを知らずに脅迫電話をかけた間抜けな犯罪者が相次いだ時代があったが、犯罪者もうっかり時代に乗り遅れてはいられないのである(笑)
 
しかし犯罪撲滅という点では大変喜ばしくもあるのだろうが、ちょっとこの監視システムは薄気味悪くも感じる。
もしも週刊文春がこのシステムを手に入れたら…という下世話な想像は別にしても(笑)、今後プライバシーの確保がいよいよ困難な未来に突入していきそうな悪寒が走る。
 
追記:防犯カメラのシステムはさらに進化を続けており、最新の研究では「歩き方の癖」を指紋レベルのユニーク値として解析する研究もされているそうだ。
そうなったら顔認証に加えてさらに精度の高い“追跡システム”が生まれそうだ。
 

自動車のナンバー認識システムである「Nシステム」は全国津々浦々かなりの数が設置されており、その数は既に2000を超えているらしく、この監視システムを一度も通過せずに都内を抜けるのは至難の技であるらしい。
 
N-System
(渋谷区周辺の各Nシステム分布図。県境はかなりビッシリ散りばめられている)
 
マークされた時点で現在や未来はもちろん、Nシステムは最大で過去数年まで行動を逆算できるという。
ぶっちゃけ自動車のナンバープレートを認識し蓄積するだけの技術、ビッグデータの初歩的な運用法といえるだろうが効果は絶大だ。
 
やはり犯罪撲滅という方向性では頼もしい限りではあるが、監視カメラ同様の薄気味悪さを感じる。
※高速道路上のNシステムとNシステムの間の通過時間を計測してスピード違反を成立させることも既に技術的には完成しているそうだ。
今後これを実行に移すか否かの選択は(一応)我々国民に委ねられている。
 
 
Nシステムを前提とすると、推理小説で「レンタカーを借りてコッソリ死体を山に埋めに行く」なんて描写は今後成立しなくなってしまうのかもしれない。
どうしてもそういった犯罪小説を作りたければ「平成14年」といった感じで時代を退行させないと物語が成立しなくなってしまう現代に既に投入しているのかもしれない。
そのこと自体は別に構わないし、今後は新たな時代に適合した犯罪小説が出てくるだろうけど、読者としてはそういったサイバー知識を前提とした物語についていくのも大変そうだ(笑)
 
「全ての防犯カメラに映らず全てのNシステムを通過せず、監視システムをくぐり抜ける現代版の透明人間」といった小説や映画はプロットとしては随分前からあるものの、今後はよりリアルな描写がされていくのだろう。
 
 
結論。
デスノートを使った完全犯罪は今後夜神ライトレベルの知能であっても難しい時代に突入してきており、少なくとも大胆にオモテに出て行動などしようものならたちまち捕まってしまう監視社会になっている。
ゆえにデスノートの物語は既に銭形平次と同じ「レトロ枠」に分類される現代となっているのかもしれない。
 
 

 
ところで僕が「デスノート」を初めて読んだときに「あ!この感じは子供の頃にも経験したことがある!」とピーンと直感の走った小説がある。
 
江戸川乱歩「心理試験」である。
(以下wikipediaよりあらすじ転載)
貧しい大学生・蕗屋(ふきや)清一郎は、親友である斎藤勇から、彼の下宿先の家主である老婆が大金を貯めていることを耳にした。老い先短い老婆より、まだ若くて未来のある自分がその大金を使った方がずっと効果的だ、と考えた蕗屋は、老婆を殺して金を奪う計画を立てる。
蕗屋は自分が絶対に疑われないように綿密に計画を立て、それを実行に移す。その後、老婆殺害の廉で斎藤が勾引された。心理テストを使うことで有名な笠森判事がその事件の担当者になったと知ると、蕗屋はそのための練習を重ねるなど対策を練った。そして、その練習は功を奏し、蕗屋は完璧に心理テストをこなした。だが、名探偵・明智小五郎はそのあまりにも完璧すぎる結果に疑いの目を向ける。

明智は探偵の身分を隠して蕗屋と会話する中で、蕗屋を罠にかけ自白へと追い詰める。 
 夜神月とエルの駆け引きや頭脳戦は、もしかしたらこの小説の影響が強くあったのでは?と思うぐらいに、お互い数手先を見据えた高度な読み合いに興奮させられる小説であった。
 
「心理試験」は1925年に発表された小説だが、今読んでも十分すぎるくらい面白いと断言できる。
 
おおよそのあらすじを書いてしまったが「心理試験」の面白さはネタバレうんぬんの部分ではない。 
「デスノート」を面白いと感じた方には是非とも読んでみて欲しい短編小説である。
そして「あぁなるほど!確かに明智小五郎とエルはちょっとユニークな部分も含めて似ているかも」的な感想を共有してみたい(^^