温度設定

僕は機械を操作する仕事を長くやってきたことが強く影響しているからだろうか、白物家電やエアコンなどのAI機能、つまり「自動」という設定を好んで利用しているように思う。
 
電子レンジなどは手動加熱をするよりも「牛乳あたため」であるとか「揚げ物カラッと仕上げ」、あるいは「鳥の照り焼き」といった専用メニューがあれば積極的に使うようにしている。
機械が食品の質量を測り最適な状態に調理をしてくれる。
当たり前のように使っているがよくよく考えれば「すごい未来技術」のような気がしてくる。
 
エアコンは今の季節なら「暖房の24℃」、夏の間は「冷房の26℃」あたり、風向や風速は自動にしている。
(自室は22℃設定でも十分暖かい。エアコンの性能に対して部屋が狭いのか物が多すぎて容積が小さくなっているのか室温は24℃で安定する)
 
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「オート」「自動」といったモードや状態が好き、というよりはそれが最も合理的であり効率がよいと機械の能力を信頼しているからなのだと思う。
 

しかし世の中にはこういった「自動設定」を信じない自動懐疑派という方が多数存在する。
 
例えば仕事先のスタジオや楽屋が暑い、というか暑すぎる!と思ってリモコンをみると設定温度が30℃になっていたりする。
訝しげに周囲を見渡しつつ25℃前後まで設定温度を下げて事なきを得るのだが、翌日また30℃になっている。
誰かが「寒い寒い!」と極端に設定温度を上げているようなのだ。
そしてこういった自動懐疑派の人は、夏場には当然のように18℃といった極端に低い設定にしやがるのだ(笑)
部屋に入った瞬間冷蔵庫のように冷えた部屋にビックリさせられ、モヤモヤした憤りのようなものを感じずにはいられない。
 
 
地味な攻防戦を繰り返すのもナニなのでエアコンのリモコンに張り付いて犯人を特定したことがある。
しかし犯人扱いするわけではなく、上から目線でもなくお互い対等な立場を意識しつつインタビュー開始である。
 
なぜあなたはここまでキンキンに冷えてしまう温度にするのか?と冷静に質問をすると「暑いからだ」という。
しかしキンキンに冷えて寒すぎるのは嫌じゃないのか?と尋ねると「寒くなったらエアコンを止めるから大丈夫だ」という。
そして「暑くなったらまたエアコンをつける」を繰り返しているのだと。
そこまで冷やさず快適な温度でエアコンが自動で止まってくれれば一番ハッピーなのではないのか?と尋ねると「しかし今暑いのが許せないので最短時間で冷えるように18℃にするのだ」という。
では18℃まで冷えたのならその後は安定温度の25℃とかにしたらよいのではないか?としつこく聞くと「冷房は涼しくなるものなのだからそれ以上のことは求めない」という。
 
今の時期に「寒い寒い!」と30℃に設定するのも「より早く室温を上げたいから」「生ぬるい温風がジワジワ出ている暖房とか納得がいかない」となるのだろう。
自動懐疑派の人が自動機能をまったく信用していないことがハッキリとわかる。
 
 
ところでエアコンの機能は最近になって急に進歩したというわけではない。
朝起きて部屋の中が5℃だったとする。
その時点でエアコンの電源を入れ設定温度を22℃にしようが30℃にしようが室温が22℃に達する時間は同じである。
エアコンは設定温度よりやや上ぐらいまで急速に暖めたあとは緩やかな運転となり室温をキープしてくれる機能が標準で備わっている。
おそらくは15年以上前には既にかなりの精度で確立していたはずだ。
 
さらに新型の高級エアコンともなれば人感センサーも備えていて、人の有無で微妙に温度や風向きまで調整してくれるらしい。
そこまでいくと「大きなお世話」のように感じなくもないが、とにかく自動設定でほったらかすのが一番機械を意識しなくて済むように作られている。
※保温機能付きの電気ポッドの性能を疑う人はあまりいないと思われるのにエアコンはまだまだ信用されていないようである(笑)
 
 
自動懐疑派の人に「今のエアコンは最初は全力運転をして最適な室温まで一気に調整してくれるんだよ」と説明しても「そんなことぐらい知ってる。ばかにするな」とムッとされてしまう。
「なぜ!?知っているならなぜ!?」と思うのだが、改宗してくれる人は極端に少ない。
 
そしてやっかいなことにこの懐疑派には「暑がり派」と「寒がり派」の二勢力があり、我々自動信望派が介入する以前にさらに過激な攻防を繰り広げていることが多い。
つまり寒いからと30℃に上げる派と、それじゃ暑いだろと20℃まで下げたりエアコンを止めてしまう過激派同士が極論でぶつかり合っているものだから戦いが永遠に終わらないのだ。
 
間をとって25℃という発想にはいかないものなのだろうか?
 
これは僕の身の回りだけの話というわけではない。
思い当たる節のある方もおられるのではないだろうか?
 
 

 
そしてもう一つ、僕はこの攻防戦の中で大きな疑問を感じずにはいられないのだ。
ややこしい説明でわかりにくいかもしれないのでゆっくり読んでいただきたいのだが、ここでは暑がり派と寒がり派の抗争は除外して考えるものとする。
 
 
冬場の18℃の室温を「寒い」と感じ、30℃の設定をして部屋が暖まっていく状態。
最終的には30℃になり「うん、暖まった」と満足しエアコンを止める。
 
夏場は夏場で30℃の状態の部屋を「暑い!」と感じ、18℃の設定で室温を18℃まで冷やす。
最終的に18℃まで下がり「うん、涼しくなった」と満足しエアコンを止める。
 
僕はそれがどうにも腑に落ちない。
なぜなら冬場は厚着をしていて夏場はTシャツ1枚とかで過ごしているだろうから、実際に夏場の30℃と冬場の30℃ではどう考えても冬場の方がより暑く、夏場の18℃はTシャツ1枚、フリースを着ている冬場よりも寒いはずなのだ。
なぜそれぞれ「より暑くより寒い」はずなのに「暖かく涼しい」と感じるのだろう?
 
真夏の18℃が快適なら真冬の18℃はもっと快適なはずなのに?
 
政府の省エネ推奨設定温度は夏場が28℃で冬場は18℃。
その真逆をまい進する反抗的な国民でもあるのだが(笑)、ちょっと辻褄が合ってないように思う。
僕は政府に素直に従うつもりもないのだが、夏場は26℃、冬場は24℃、希望設定温度は平均すれば年間通して25℃で安定している。
 

無理やり想像してみたのだが、自動懐疑派の方は「なんとなく」という状態を好まないということなのだろうか?
夏にしても冬にしても24〜25℃あたりの室温で湿度が40~50%であれば誰でも快適に感じるのだろうと今まで勝手に思っていたのだが、ガンガンに薪をくべるとかキンキンのエアコンの風がないと満足できないということなのだろうか。
 
星 新一氏の「最高の贅沢」というショートショートを思い出す。
 
大富豪の友人の招待を受けて極寒地方にある別荘に吹雪の中向かうと巨大なドームがあり、ドームに入ると中は人工太陽で熱気ムンムン。
コートを脱ぎ、吹き出す汗に堪えながら館に入ると屋内はエアコンでキンキンに冷やされていて慌ててまたコートを着込む羽目に。
寒さに震えながら広間に入ると暖炉があり、やれありがたやと暖をとるが薪が勢いよく燃え盛っていてTシャツ1枚になっても尚熱い。
汗をダラダラかいているところで「最高の贅沢をどうぞ」とよく冷えた生ビールを渡されるというお話。
 

僕にしても「一年中同じような気候だったら」…と思っているわけではない。
日本の四季はそれぞれに好きだし、暑い日があるからこそグイグイ飲む生ビールが美味いのであるし、凍える夜道を歩いて帰ったからこそ熱燗だったり焼酎お湯割りが胃の腑にしみる〜と感じることができるのだ。(酒の話ばかりで恐縮だが(笑))
 
薪ストーブや暖炉のダイレクトな熱気は大好きだし、そもそも僕は幼少の頃に広大な野原を全焼させた前科があるぐらい焚き火が大好きなのだ(^^;
 
しかしエアコンふぜいにそういった原始的欲求は望まないし、極端な熱交換をさせたいとも思わない。
自動で適温をキープするのが得意だというのなら素直にその恩恵を授かりたいと思うし、それ以上は求めない。
 
大きなお世話かもしれないのだが、エアコンの設定温度はなるべく中間的にしておくのがやはりもっとも効率がよいと思われる。
 
自動懐疑派のみなさん、今一度考え直されたらいかがだろうか?
もちろん強制はしないのだけれども(笑)
 
 

尚、大きなお世話ではなく真実の補足を一つしておくと、エアコンはこまめなオンオフがもっとも電気代を浪費する使い方となる。
一定温度を保つという考え方がもっとも省エネにつながる。
1〜2時間程度の外出時でいちいちオフるのはかえって電気代がかかるらしい。
 
「24時間つけっぱなしがもっとも電気代が安くなる」という説もあるのだが、その条件を成立させるのはかなり限定的となってしまうらしい。
僕も一時期この24時間パターンを試みたのだが、結果はやや高くついた上に精神衛生上もあまりよろしくなかった。
やはり多くの人の生活パターンでは寝ているときや仕事に出かけるときは止め、帰宅したら寝るまではつけっぱなしが吉となるのだろう。
 
さらにエアコンに限らず電球などにしてもこまめなオンオフはちっともよいことがないと実証されている。
国民生活センターによる電球の耐久時間を調べる実験によると、いろんな会社の数個の電球を2時間50分点灯し10分休ませるを繰り返したところ、一番長持ちしたもので6000時間。
それに対して5分点灯、1分消灯を繰り返した電球は一番短いものでは273時間で切れてしまったそうである。
これは10年程前のちょっと古い実験結果なのだが、ここ最近のLED電球であってもLED自体は壊れてないのに基盤や配線の経年劣化で結果としてちっとも長持ちしないLED電球(笑)が問題となっているらしい。
そして劣化の原因はこまめなオンオフがもっとも関与していそうである。
発光コストが安く本体価格の高いLED電球であるだけに、コストと省エネについて改めて考えさせられる。
 
 
つまりこまめなオンオフはせず、そしてできることならエアコンは自動設定で半ばほったらかす心持ちがよいかと思われる。←食い下がる(笑)
 
自動懐疑派の中の一人でも考えを変えるきっかけになれば…という大いなる野望を抱きつつ今回のエントリーを終えたいと思う。