アナログとデジタル

 
前々回からの続きとなる。
 
タランティーノの最新作「ヘイトフルエイト」が「Ultra Panavision 70」という50年近く前の規格を復活させて撮影されたと伝えた。
レンズなどの機材も50年前のものを使っているそうだ。
もちろんレンズだけが古いわけではない。
デジタル撮影ではなくアナログの70mmフィルム。
通常のフィルムは35mm幅で縦向きにスクロールするのだが、70mmは倍の幅の大型フィルムが横向きに流れるそうである。
撮影はもちろん上映するのにも大変なコストがかかるそうで、採算が取れないという理由で廃れていった過去の産物である。
 
しかしハリウッドでは現在デジタル撮影は廃れつつあり、従来のフィルムでの撮影が復活傾向にある、と前回の最後に紹介したのだがその理由をご存知、あるいはなにか思い当たることはあるだろうか?
 
これは僕もアナログ回帰の記事を読んで非常に納得してしまったのだが、言われてみれば思い当たる節があった。
 
デジタル撮影。
その時代の最高スペックで撮影されたものは当然その時代では最高に美しいわけだが、現代技術の進歩速度は凄まじく、10年前の最高スペックも現代ではスマホレベルに追い越されかねないスピードだ。
 
141120HIkariTV-02_02
画面が大きくなるというよりは同じ面積の中をどれだけ細分化できるかと考えるのがポイントだ。
 
これを例えるならば、ザルの目の細かいものを使ってふるいをかけた砂つぶを1K画像だとする。
10年前なら信じられないぐらいきめ細かい砂つぶと思えたものだが、その後技術が進み2k、4Kというさらに細かいザルの目が開発され、より細かい砂つぶをより分けることができるようになる。
当然1Kサイズの砂つぶは4Kのザルは通過ができなくなっている。
 
 
ざる
 
アップコンバージョンという技術はあるにはあるが、あくまでも擬似的なもの。
せいぜい石に丸みを持たせるような効果のもので、石そのものが小さくなるわけではない。
 
つまりせっかくの最新技術も数年先には「なんだこのギザギザは?」と取り返しのつかなくなる画面になるという宿命を背負うことになってしまう。
ハリウッドの映像作家たちはデジタル撮影を一旦は受け入れたものの、この10年の時代の流れで「ちょっと待て……」となったのであろう。
 

解像度の荒さに人間は敏感だ。
当時あれほど鮮明で美しく感じられたDVDの画質が今やかなり荒く見えてしまうとは思わなかった。
 
CGの技術はもっとわかりやすい。
これはスーパーマリオを思い浮かべれば極端にわかりやすいだろう(笑)
the-evolution-of-mario
解像度が細かくなることによってキャラの表現にここまでの違いが出てくる。
 
  
映画の画面にここまでわかりやすい違いはないにせよ、あれほど当時はリアルに感じたタイタニックやマトリックスのCG技術が今ではあからさまにCGに見えてしまうということを考えると、映像そのもののクオリティーも安心はできない。
10年後も50年後も変わらないクオリティーにしておくにはどうしたら良いのか?と考えた先の結論が「アナログ方式」になったのであろう。
 
先ほどの例をもう一度挙げるならば、「ザルの目は通さない」ということになろうか(笑)
 
僕がこのことに最初に気がついたのはブルーレイが出始めてしばらくたった頃に見た「ゴッドファーザー」だった。
1972年公開のこの映画のブルーレイがどうにも画質が良いのにビックリさせられたのだ。
その時は単純に「あぁ昔の映画でもこんなにキレイな画面になるものなんだ」と思っただけだったのだが、マスターがアナログであればその都度「その時代で最高のデジタル画質」にすることができるということになる。
 
これには虚をつかれた感じがした。
 
 

さて、音楽の世界ではどうだろうか?
音楽の録音はデジタル方式が主流になってから既に30年が経過しており、現在はDAWというコンピューター上に直接記録していく方式がほぼ100%となっている。
果たしてアナログ方式での録音の復活はあるのだろうか?
 
結論から言ってしまえば、おそらくはないだろう。
 
録音そのものはデジタルでも、その入出力時に通る際のアナログ回路の品質で音そのものが随分変わるという技術が確立しているのもある。
理由は他にもさまざまあるかとは思うが、映像との違いとして筆頭に挙げられる理由は…
おそらく録音方式の部分だけをアナログに戻したところで最終的なクオリティーの差にそこまでの大きな差が生まれないことがわかってしまっているからだと僕は思っている。
 
音、人間の聴覚というのは視覚と比べると驚くほどにいい加減なものらしく、上記に挙げた2Kと4Kの差のような聞き分けは専門家であっても結構難しい。
データ的には数倍〜数十倍の差があっても、明確な違いとしてその差を認識しにくい。
 
今現在みなさんが普段聞いているであろう音楽の再生方式はmp3やAACといった圧縮音声規格が大多数だと思うのだが、データ量的にはCDの約10分の1となる。
これはある側面から見るならば、ニンテンドーWiiの64bitマリオをファミコンの8bitマリオに退化させているようなものだと言ってしまっても差し支えない(笑)
 
一方我々が普段録音現場で使用している24bit48KHzや96KHzといった音質は、単純なデータ量で比較するならば20倍以上となる。
しかし、じゃあ20倍音質が良いのか?となると、決してそういうわけでもない。
 
話がややこしくなってきた。 
まだまだ長くなりそうなのでここで区切る。
 
次回はさらに「ハイレゾ音源と空耳アワーについての考察」をしてみたい。