幽霊の正体

前回、前々回の続きである。
 
「季節外れの怪談〜前編」
「季節外れの怪談〜後編」
 
まずはこの怪談だが、僕が20歳の時に実際にした体験を元に書き起こしている。
当時の日記やその後書き残したものをさらに再構築しているので、詳細はかなり正確だ。
 
凄い体験だったと思う。
ここまでの霊的恐怖感を味わったのはもちろん初めてだった。
その他にも何度か辻褄の合わない出来事に遭遇したことはあるにせよ、この時に比べたらあまりにも瞬間的な出来事ばかりだ。
 
 
ところでこの話にはまだ続きがある。
純粋な怪談部分は前回で終わりなのだが、主にはこの不可解な怪奇現象の謎を自ら解明していくエピローグ的なパート、あるいは「真のエンディング」となる。
 
 

 
…しばらくは動けなかった。
交差点に差し掛かった場所に停車させたまま動けなかったのだが、車の往来のほとんどない田舎道。なんの問題も起こらない。
こんな交差点で事故が多発すること自体、そもそもがおかしな話じゃないのか?
 
気を取り直して車を発進させ国道16号に入り、最初にあったコンビニの駐車場に車を停める。
ここで改めて数分前に起きた一連の出来事を反芻させる。
 
一体なんだったのだろう?
 
まずはずっと違和感の残っている左足の状況を確かめてみることにする。
先ほど何かに叩かれた後も左足の甲の上になにかが乗っていたのだ。
いつの間にか感覚はなくなっているが何かの痕跡が残っているかもしれない。
 
恐る恐る足元を見てみると、発煙筒が落ちていた。
振動でホルダーから外れて足の上に落ちてきたということになるのだろうか?
 
次に車を降りて助手席側に回ってみる。
ドアの外にはおびただしい数の泥の手形がついていた…
…といった車系怪談の定番パターンがあるはずもなく、助手席ドアを叩いていた異音の正体もあっさりと判明する。
 
女の子がドアを閉めるときにうっかりしていたのか、シートベルトの金具がドアに挟まれて外にはみ出ていたのだ。
それがでこぼこした道の振動と風でコンコンと車のボディーにぶつかっていたのだろう。
 
「幽霊の 正体見たり 枯れ尾花」
 
しかし、恐がりな自分と偶然が作り出したというにはあまりにも話というか、状況が出来すぎているようにも思う。
素直に「なぁんだ」と思うことが出来ない。
 
何よりあの助手席ドアを叩いていた「ドンドンドン!」という音。
あれはシートベルトの金具が当たる音とはまるで違う大きな音だったからだ。
 
 
さらに後日、一連の恐怖に追い打ちをかけるようなことが発覚する。
 
この時送り届けた女の子の消息がわからなくなってしまった、というよりも、そもそも“誰だったのかすらわからない”ということが段階的にわかってきたのだ。
確かに名前を聞いているはずなのだが、記憶にモヤがかかっているようにどうしても思い出せない。
 
女の子の印象そのものがとても曖昧なばかりか、誰に紹介されたのかもハッキリとせず、その時にいた友人たちに聞いてみても誰も知らないと言うばかりであった。
そこにいたはずなのに誰も知らない、思い出せない…まるで座敷童子のような不気味さにゾクっとなる。
 
僕は誰に彼女を紹介されたのだろうか?
なぜ僕は彼女に出会い、あの場所に向かう羽目になったのだろう?
 
もう一度現地に向かい彼女の家に行けば答えがわかるかもしれない。
だけどもそれをする勇気は僕にはまるでなかったし、知らないままの方がいいに決まっているという確信もあった。
 
ありえないことだとわかっていながらも、こんなふうに考えてしまう。
もしかしたら……彼女こそがあの交差点に人を導く悪意の集合体、霊的存在の中心だったのではないのか?と。
そう考えると不合理な出来事すべてが符合してくるように思えるのだ。
 
 
国道16号を一本入った先のあの交差点は、今も信号のない同じような違和感のまま誰かが来るのを待っているのかもしれない。
 
普段は通らないから大丈夫と思っている人であっても用心したほうがいい。
 
そこを通るように罠を仕掛けてくる霊的存在があなたの助手席に絶対に座らないという保証はどこにもないのだから…
 
「次の信号を右折です」
彼女の印象は曖昧になってしまったが、この声のトーンだけは頭にこびりついており未だに離れない…
 
 
 
終わり
 
 

 
次回は「幽霊の正体〜番外編」。
あまり引っ張るのもアレな内容なので連続エントリーをする。
肩の力を抜いてさらに俯瞰ポジションからの分析をしてみる。
というよりもテンションが違いすぎるので別々に分けたというのが正解に近い(笑)