クリーピー 偽りの隣人

 
あの人、私のお父さんじゃありません……全然知らない人なんです!
 
何回か予告編を見る機会に恵まれ、昨日の昼間にたまたまやっていた「本日から公開」といった内容の番組を見終えた瞬間に「見たい度」が臨界点を超えたようだ(笑)
その時点でレイトショーのチケットをネットで確保して急遽観てきた。
 
香川照之、西島秀俊、竹内結子、東出昌大(この彼最近急速にいろんな作品に出てますね!)とソウソウたる顔ぶれのキャスト陣!
監督は黒沢清。個人的には伊丹十三プロデュースの「スウィートホーム」の不気味さが非常に好きだった。
石橋蓮司主演の「奴らは今夜もやってきた」という短編の持つ微妙な空気感も大好きな監督だ。
 
予告編を見た時点で「謎の未解決事件」「連続殺人」「サイコパス」「人間のすり替え、なりすまし」「なにかドロドロした不気味な世界観」といった得体の知れない要素の数々にドキドキさせられた。
僕の敬愛する映画「羊たちの沈黙」の持つ“サイコスリラーの傑作”のような雰囲気を醸し出しているではないか!
 
そして映画がはじまった!
 
ドキドキワクワク……
 
ttl
 

そして映画は終わった。
 
エンドクレジットが出た瞬間、僕の心の中の言葉は
 
「おい……マジか?(-“-)」であった。
 
周囲のお客さんの反応も概ね自分と同期しているかのように
「ツッコミどころ満載」
「これサイコスリラーとかじゃないよねぇ?えええ?なにこれ?」
「伏線の回収がなさすぎ!ひどい!」
「笹野高史サン面白すぎ!」
 
とさんざんであった(^^;
Yahoo!映画のレビューなどをザックリ検索してみても評価は極めて低い。
初日にワクワクして見た同胞諸君は僕と同様みなお怒りのようだ。
 
夕べはこれらのレビューを読みながら自分の怒りを増幅させ、思いつくままの罵詈雑言を中心に「怒りのレビュー」を書き殴ったりしてみたのだが(^^;、一晩寝てスッキリしたところで改めてブログ用にこの映画の再考をしてみた。
 
以降ネタバレありの方向で検証をしてみたいのだが、今回のネタバレガードに関しては主にこの映画の序盤の素晴らしい部分だけを抽出してみた。
ここだけ読んだらもしかしたら「ちょっと見てみようかな……」と思えるかもしれない(^^
 

 
 
 
 

 
冒頭の雰囲気はとにかく素晴らしい。
とある警察署内、凶悪なサイコパス殺人犯の事情聴取中に起こる惨劇。
天才的に頭の切れる犯人の大胆かつスピーディーな手口であっという間に取り返しのつかない最悪の事態となってしまう。
サイコパスという特殊な人間の犯罪能力の高さを誇示するかのような凄惨なオープニングだ。
そんな絶望的状況から物語は始まる。
緊張感いきなりMAXの雰囲気がすごい!
 
この事件で大怪我をしたことをきっかけに刑事を辞め、犯罪心理学の専門家として大学の講師となる主人公(西島秀俊)。
そして大学の研究室内のふとしたきっかけから6年前に起こり未解決のままとなっていた失踪事件に関わることになる。
一人の少女を残して家族3人が忽然と姿を消してしまった「日野一家失踪事件」。
早速事件当時のまま放置されている空き家に赴き門の前にたたずむ主人公。
「犯罪現場特有の感覚がする…」という言葉が、ゾッとするほどに現場周辺に漂う不気味な空気感を的確に表現している。
 
この家には近づきたくない…
そんな忌まわしい気配に満ち溢れているようだ。
 
時同じくしてその場になぜか居合わせた少女。
当時の事件の唯一の生き残りの中学生が成長した姿になっていた。
6年の歳月を経た今になって、当時の記憶が少しずつ戻り始めているという。
大学の研究室の事情聴取で警察やマスコミには語られなかった当時の証言をポツリポツリとする少女。
 
う〜ん素晴らしい!
不気味な空気が重くのしかかり続ける感じがとにかく素晴らしい。
 
その事件とは別に、主人公が引っ越してきた家の隣人、香川照之演じる西野という男の奇人ぷりがまた気味が悪い。
「こんにちは。隣に引っ越してきた高倉です。よろしくお願いします」といった日常会話をするだけでも神経がすり減るような不条理な会話の連続になってしまう。
「今日は普通の人だな」と思えてもちょっとした単語一つをキッカケに突如またおかしな人になってしまう。
 
「間違いなくコイツが物語の核となる犯人なんだろうなぁ」と思いながら見ている我々としては、彼の一挙手一投足がいちいち見逃せないのだ(笑)。
そんな我々の期待に100%応えてくれる香川照之の細かな演技がとにかく素晴らしい!
 
“もうあきらかにおかしな人”であることは確定しているのだが、主人公夫婦はまだ「ちょっぴり変な人」ぐらいにしか思ってない。
 
まさに「志村うしろ〜!的状況」である(笑)。
 
そんな中でこの映画の一番の売りとなるあのセリフがやってくる!
 
「あの人、私のお父さんじゃありません……全然知らない人なんです!」
 
 
ここから物語は一気に転がり始める!!
 
 ……しかし正確にはここから物語は一気に
変な方向に転げ落ち始めるのだ。
 
緊張感という糸がプッツリとキレた凧はどこまでも遠くに飛び去ってしまうかのように思えた。
 
つづく(^^;