ヴァンパイアの憂鬱・2

吸血鬼探求が止まらない。
 
元々僕はどんどん情報を取り入れて吸収できるタイプではない。
一つのテーマを別角度や別視点でずーっと観察し執着し続けるのが好きな人間だ。
 
映画を見るのは好きだけど、いろんな映画をまとめて見たりシリーズモノを一気見するのが苦手なのはきっと、頭の回転が遅くて情報処理が追いつけないからだと思われる。
 
なので今回も新しい作品には触れないように範囲を限定していたのだが…
 
「歳をとらない苦悩」というテーマで吸血鬼のことを調べていたら、ずっと昔から名前だけは知っている超有名少女マンガに行き着いてしまった。
 
萩尾望都「ポーの一族」である。
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こういった調べ物をしている時に検索をした作品が電子書籍化されているのは実によろしくない(;^_^A
ワンクリック購入をし10秒後には読み始めることができてしまうのは便利である反面、どうしても出費過多の傾向となってしまう。
 
人に借りるとかブックオフで古本を買うとか漫画喫茶に籠るとかを一切せずに工夫ゼロですぐに購入できてしまうのがよろしくないのに加え、この年齢になるとマンガ本はこれ以上物理的に増やしたくないという自制心も働く。
(僕の部屋はマンガ本だけでも2000冊以上がひしめいており、その他の書籍や文庫本やCDやオモチャや……倉庫兼書庫となっているロフトの底が今にも抜けそうで怖い)
その点電子の中なら何百冊増えようが安心!と発想してしまうのもよろしくない。
 
 
と言いつつも「ポーの一族」。
 
44年前の作品というのは本当なのか!!というあらゆる意味でのクオリティーの高さに興奮している。
初めて読み始めたばかりの“にわか”なので感想は控えるが、自分の中の吸血鬼の世界観が大きく変わりそうな気がしている。
 
1巻を読み終えた時点でもはや読了まで引き返せない魅力に支配されてしまった自分である。
物語冒頭にある「人間のふりをする」という説明一つとっても実にきめ細やかな説得力を感じる。
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と新たな出会いをしつつ、今回はもう一つ僕の好きなヴァンパイア映画を紹介しておきたい。
 
モールス〜Let Me In
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元々は「ぼくのエリ 200歳の少女」というスウェーデン映画のリメイク版である。
 
この作品はハイド氏が「この映画面白かったから見てみたら?」とDVDを借してくれたので早速見たら本当に面白くて、その後何度も見返してしまった映画である。
先日5回目の鑑賞をまたしてしまったが、やはり面白かった。
 
この映画のヴァンパイア少女アビーを演じるクロエ・グレースはこの時12歳。
「インタビューウィズヴァンパイア」のクローディアを演じた時のキルスティンダンストと同齢だ。
 
この映画のアビーはクローディアとは違い、少女として生き続けることへ苦悩する人間らしさ(?)のようなものはほぼ感じない。
むしろその姿であることを達観しているようでもある。
 
少女アビーは父と二人暮らし、その父は体を悪くしており疲れ果てた印象の初老の男。
しかし実際は血の繋がった父というわけではなく、アビーを守る忠実なしもべであることがわかってくる。
 
(見た目的には)同じ年頃の少年オーウェンの視点を中心に描かれる本作は淡い恋心のような美しい話であると同時に、よくよく考えてみれば非常に恐ろしく切ない話でもある。
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(KICK ASSの“ヒットガール”を演じたのが同年というのも面白い話だ)
 

ここでヴァンパイアと“せむし男”の存在について説明する。
(※せむし男は差別を助長する放送禁止用語と定義されており日本社会から葬られようとしている言葉だそうだが、おとぎ話やフィクションの世界における言葉をも圧殺しようという考え方に僕は疑問を感じている)
 
ヴァンパイアは前々回の「信心深きモンスター」でも解説した通り、優れた特殊能力を持つ反面、致命的な弱点をたくさん持っている。
太陽の出ている時間の寝込みを襲われたらそれで終わり、事実上単独で生き続けることが非常に難しい。
多くの弱点をカバーしてくれる強力なサポーター、忠実なしもべがいなければたちまち死に追いやられてしまう。
 
ヴァンパイアにとって最も重要な存在、それは美しい獲物でもなければイケメンの仲間でもない。
忠実なる側近、せむし男的ポジションの存在なのだ。
 
基本的にヴァンパイアの側近は人間であることが多い。
同じ弱点を持っていたのではあっという間に一網打尽となってしまうからだ。
 

この側近でとてもユニークなのが、以前も紹介した「フライトナイト」で、なんとイケオジ中年ヴァンパイアとホモの関係っぽいイヤラシそうな青年なんである(笑)。
男の一人暮らしに妙な説得力を持たせる存在で、ご近所さんにも「んま!不潔!」といった感じで変に納得されてしまっている感じ(笑)、いかにもコメディー要素の強い本作品らしい。
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同監督の「チャイルドプレイ」ではイカス刑事役を演じたクリス・サランドン(左)
 
 
そして「モールス」でアビーの側近をしている初老の男に目を向けてみると、ライトタッチの映画とはまるで違う“鈍い重み”のようなものを感じる。
 
永遠に歳を取らないヴァンパイアに対して、人間はどんどん年老いていく。
 
この男とアビーとの間にどんな歴史があったのかは1枚の写真を除いては特に描かれていないが、察するに余りある。
 
そういった部分に想像を巡らせ余韻に浸る余地を残してくれる映画でもあった。
 
この映画はヴァンパイアだけではなく側近の苦悩もキチンと描いており、そこにスポットを当てたヴァンパイア映画という点でも好感度は高い。
 
モールス〜Let Me In
 
僕のオススメとしては珍しく、美しく切ない耽美派のホラー映画である。
 
 

(おまけ)
ところでこの作品は「ぼくのエリ 200歳の少女」のリメイクであると書いたが、やや不自然と思うのがそのリメイク時期。
オリジナルが2008年製作に対してリメイクの「モールス」は2010年。
古い映画をリメイクするというよりはアメリカ版を速攻で作り直したという感が強い。
かなり忠実なリメイクでありながらもいろいろと違う。
 
ではどちらが面白いか?
 
このテーマで検索をしてみると興味深い意見がたくさんヒットする。
 
僕も両作品を見ているのだが、こういったケースはどうしても「先に見た方」に軍配があがるような気がする。
ポンコツ映画「宇宙からのメッセージ」にどうしても勝てない本家「スターウォーズ」という苦しい心境は以前にも書いたが(苦笑)、→http://jinxito.com/2015/12/10/starwars1/
 
自分にとってのファーストインパクトというのはなかなか払拭できないものなのだなぁとつくづく思う。
 
どちらを先に見るかはあなたのお好みでどうぞ。
 
 
※尚「モールス」は現在Huluで配信されている。
以前は「ぼくのエリ」も配信されていたのだが現在はなくなっているようだ。