交差点ドラマ

交差点の赤信号で車を停車させる。
そのときドライバーというのは案外ちゃんと周辺の状況を無意識ながら観察しているものだ。
 
視線の両脇にある歩行者用信号の点滅を確認し、交差する車線側の信号機が黄色になり赤になるのを確認し、次に左折をするならば左側の横断歩道の手前と向こう側に歩行者がいないかなども同時に見ている。
 
少なくとも僕はそのように次に起こる連続事象を、指差し確認まですることはなしの無意識下で追っている。
 
最近気になっているのが、信号が青になってもすぐに渡らない歩行者が増えてきたということ。
原因はスマートフォンである。
画面に気を取られて信号が青になったことに気がついていないのである。
 
ドライバーというのは上記のように無意識にいろんなタイミングを見ているので、当然こういった歩行者の動きも予測しながら車を動かしている。
動くべきタイミングで動かないので「じゃあ渡らないのかな?」と車を発進させると突然横断歩道を渡り出すので慌てて急ブレーキを踏むハメになる。
「なんだよもう…」と思うのだが、歩行者はそんな我々を「歩行者優先だろうが!」と批難の視線で睨みつけてくるのだから実に納得がいかない。
 
とはいえ99%以上の信号待ちは予定調和の日常として忘れ去られていくだけなのだが、時として「いつもとは違う変化」が起こり、記憶に残る出来事に発展する場合がある。
 
今日はそんなエピソードを2つ紹介してみたいが、例によって実にくだらない、事件でもなんでもない些細すぎる出来事なので、期待して読んではいけない(笑)。
 

(トヨタ PROBOX 営業車を代表する高性能バン)
 
何年か前に非常に申し訳ないことをしてしまったことがある。
 
その当時いつもの通勤路を走っていたところ、目の前を走っていた車はなんの変哲も無いプロボックスだったのだが、リアウィンドウの会社のロゴと社名がぶっ飛んでいた。
 
検索してみても現在はヒットしないのでもう倒産してしまった会社かと思われるが、一応社名は伏せておく。
 
でんでん虫の可愛いロゴマークで、「うぷぷ。可愛い」と信号が赤の時にパシャッとその営業車のリアウィンドウに描いてあるロゴを撮った。
 
その時である。
その営業車を運転していた営業マンらしきドライバーが急に慌てだしたのだ。
 
たまたまバックミラーを見ていたら写真を撮る僕の姿が見えていたのだろうか。
 
その瞬間からやたら背後を気にするようになり、信号が青になる度にスピードを上げて振り切ろうとするのだが、折しも渋滞気味の上にタイミング的にもよく信号にも引っかかった。
 
その度にミラー越しでこちらの挙動をガン見している。
 
「いやいや違いますよ。おたくの社名ロゴが可愛かったから撮っただけですよ」とも言えない。
 
しかもなんの因果かそこから1キロほど、その営業車と僕の車は同じ道順を通るハメとなり、間に車が入ることもなく、結果として僕はその営業車の後ろにピタリとつけることとなってしまった。
 
もはやそのでんでん虫営業マンはパニックである。
 
しかし車を隔てた後ろ姿を見ているだけなのに、ここまで気が動転しているのが伝わってくるというのも、どれだけわかりやすい性格をしていらっしゃるんだろうか?
 
結果かなり無謀な信号無視、暴走ブッチギリで逃走をしてしまった。
 
まさに一方的なカーチェイスである。
(でんでん虫営業マンの脳内イメージ予想)
 
僕のことを探偵か刑事とでも思ったのだろうか?
 
浮気調査?素行調査?横領疑惑?
 
「社名とロゴが面白かったから」だけなんである。
 
返すがえすも悪いことをしてしまった。
 
スンマソン!
 

もう一つの印象的な記憶は、やはり同じ道を走っていた時のこと。
目の前を走っていたミニクーパーに男女カップルが乗っていた。
 
かなり仲睦まじい雰囲気で、早い話がイチャイチャしており、赤信号で停まる度にギューッとくっついたりしている。
 
こういう時の心情としては、ムカつくのが半分と「ほれ、もっといっとけ!」といった無責任なエロ感情半分が交互に沸き起こるようだが、この時はもう一つ別のおかしなことが起きていた。
 
そのミニクーパーのリアワイパーがフルでグイングイン動いているのだ。
天候は晴れ。
 
よほどの雨の日であっても通常リアワイパーなんて滅多に動かすことはないのに、晴天にリアワイパーフル稼働。
 
謎である。
 
ワイパーというのはゴム製の消耗品であり、雨が降ってない状態で使い続ければ当然すぐに磨耗してしまうし、ワイパーと窓の間に小石が挟まったりしてしまったら窓が傷ついてしまうようなリスクもある。
(僕は事務所の若者に「こら、赤信号で停まっている時はオフ、もしくは間欠位置にしなさい」とお小言を言うぐらいにワイパーの挙動にはうるさい(笑))
 
ミニのイチャイチャカップルは他人ではあるが、親切心で軽くクラクションを「プッ」と小さく鳴らしてみる。
 
こちらをバックミラー越しに見ればリアワイパーがフル稼働していることにも気がつくだろう。
 
しかし気がつく気配はなくイチャイチャしているだけである。
 
次にライトを上向きに短く点灯させるいわゆる“パッシング”を試みる。
晴天の昼間とはいえどさすがに気がつくであろう。
ミニクーパーは車高も低く、こちらはSUVでライトの位置も高い。
 
しかし無反応でまだイチャイチャしている。
 
なぜだ?なぜ気がつかないのだ?(-“-)
 
しかし信号が青になった時に目の前のドライバーから意外なリアクションが返ってくる。
 
窓を開けて、そしてあろうことか高らかに中指を立てられたのだ。
 
えええ!!!
 
日本ではあまり定着しない仕草ではあるが、かなりの挑発もしくは怒りを示すサインであろう。
 
まるで僕が「白昼堂々イチャイチャしているとはけしからん!こら!」と嫌がらせをしたみたいではないか。
異常に心の狭い男か、よほど倫理観や道徳観に厳しいウザすぎる男とでも思われたということなのだろうか?
 
なんたる心外!
 
僕はリアワイパー全開ですよ!ということを伝えたかっただけなのに!
なんでこちらの挙動には気がついていてワイパー全開に気がつかないのだ!?
 
まさに前述のでんでん虫営業マンの如き猛スピードで追いかけて「違う違う!」と伝えたい気持ちになった。
 
ミニクーパーはそのままリアワイパー全開のまま走り去っていくのであった。
 

「人間交差点」とは違い、深みの一切ない交差点ドラマで申し訳ない。
 
そこから学ぶ教訓もなければ、ためになる話でもなんでもなくてなお申し訳ない(笑)