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たまにはシンセの話でも…その1

前回と前々回に紹介した「The Bogányi Piano」だが、その後もいろいろ検索していたら従来にない利点というものをいくつか見つけた。
その中でも「機能的に進化した部分があるのかないのか?」という部分で、従来のピアノよりも優れた点があったので追記事項として紹介しておく。
 
カーボンファイバー製のこのピアノ、その材質の特性的に「環境による材質の劣化、影響が起こりにくい」という大きな利点があることがわかった。
つまり高温多湿の国、例えば日本の風土はピアノ本来の純粋な“鳴り”を保つのが困難な環境であるといえる。
高密度のカーボンファイバーは湿気を吸収しにくく、また温度変化などにも強いという特性を持っていたのだ!
 
これは凄い!ピアノの革命となるのではないだろうか。
 
と一瞬は思ったものの……しかし、こうも思う。
3000万円もする高価なピアノを24時間空調の環境以外に置いておくことも考えにくく、実際どこのスタジオもホールもこういった特A級ピアノの保管は同じくして特A級の管理体制を怠たることもないだろう。
大丈夫だからと野ざらしにするようなズサンな管理になるとも思えず、「その特性本当に必要?」という意地悪な見方ができなくもない。
大仁田厚がボディーガードを雇うとか、kenちゃんに下ネタを提供するぐらいの“それいらないんじゃ?”と思う特性のように思わなくもない(笑)
 
が「デザインだけ」という僕の中のイメージは曲がりなりにも払拭されたということを追記しておく。
 
またアーティストでありピアニストである友人にも「1800年代に確立された現代ピアノ、あれから200年だもんねー!これもありなんだあ!🤔」(原文と絵文字そのまま)といった、何にせよ進化の模索の方向性に肯定的な意見も寄せられた。
 
今後も楽器の進化には注目していたいと思う。
 

さて、楽器の進化といえばシンセサイザーのヴァーチャル化がいよいよ過渡期を超えて次のステップに移行しつつある。
「ソフトウェアシンセサイザー」なるパソコン上で動作するシンセが登場したのが1997年、既に20年が経過している。
(ReBirth RB-338は名器Roland TR-808とTB-303を模した世界初のエミュレートシンセサイザー)
 
今となっては修理も困難なレアパーツの数々、MIDI規格よりもさらに古いDCBやCV/GATEといった古い規格の機器を現代で使い続けるのはかなり難しい。
そこでエミュレートという技術を使ってパソコンの画面上に古い名器を復活させてしまおうというのが、一連のソフトシンセの進化の流れである。
 
シンセサイザーという楽器とパソコンとの相性が良かったのはいうまでもない。
各回路や抵抗といったパーツ一つ一つの電気信号をソフトの中で再構築するという作り方は、他の楽器と比べてもかなり合理的かつ正確な再現をすることが可能であったからだ。
 
Arturia社「Moog Modular V」
YMOや冨田勲氏も使用していた巨大モジュールシンセがパソコンの画面内で蘇った!俗称の「タンス」はまさにタンスのように巨大だったから(笑)
 
YMO第4のメンバー松武秀樹氏と愛機MoogIIIc
 
最初はこういった「歴史の中の名器の再現」から始まったソフトシンセは、当然の流れとして「ソフトシンセ独自の新しいソフトシンセ」の発表に行き着く。
最も有名なのは、Native Instruments社の「MASSIVE」であろうか。
 
VAMPSのサウンドメイキングでも縦横無尽に使われているソフトシンセ
 
ハードウェアの既成概念に捉われることのない自由な発想で作られたこうしたソフトは、実際ハードウェアシンセでは作れないような音を作ることができることでも話題となり、そのサウンドから新たな音楽分野が開拓されるまでに至った。
DubStepやBigRoomHouse、Waveといった細分化されたジャンルはもとより、EDM(Electronic Dance Music)と呼ばれる巨大な音楽群そのものこそ、こういったソフトシンセの台頭がなければまず生まれなかった音楽であると言い切ってよいかと思われる。
 
僕個人のマニピュレーター経歴でも、ラルクのアルバム「KISS」制作期間のちょっと前あたりから、こういったソフトシンセに強く傾倒していった。
それまでの数十台のラック音源をスタジオに持ち込んでいたスタイルから、最終的にはパソコン2台とその他最小限の機材セットにまで縮小化していった。
 
しかし同時に弊害も感じ始めていた。
 
自由な発想は結構なことなのだが、まず音作りのイロハの部分からして非常に難しく、出来ることのあまりの多さに「どうやって音を作ったらよいのか見当もつかない」となってしまったのだ。
今までの音作りとは根本的に発想の違うソフトウェア音源が多数発表され、我々は大いに混乱させられた。
「Bundle Pack」といったものを購入する度に、10〜20の新たなソフトが提供され、各ソフト毎に数千〜数万のライブラリが雁首そろえて並んでいやがるのだ(笑)
とてもじゃないが捌ききれない!
 
結局はプリセットと呼ばれる最初に入っている音から「選ぶ」か、もしくは追加パックを購入するなどしてもどの道「選ぶ」ことしかできなくなり、いつの間にかシンセサイザーは「自由に音を作るモノ」から「膨大な量のプリセット音からイメージに近い音を探すモノ」になってしまった。
「ちょっと音の長さを変えたいだけなのに…」といった簡単なことすら階層メニューのどこをイジれば変わってくれるのかもわからない(´Д`)、ということが誇張でなく本当に起こり、ますます気力をくじかれる。
 
音作りの専門家というポジション的にも「実はよくわかってない」という複雑な構造をしたソフトシンセは、何ともバツが悪く恨めしい存在でありながら、しかし絶対的なクオリティーの高さにどうにも抗えないという……まさしく悪魔のような魅力を持ち合わせるシロモノになっていったように思う。
 

そんな複雑怪奇な進化を遂げたシンセサイザーも数年前から、そして去年あたりからも「新世代」と呼べるような次なる進化を遂げているようである。
 
その方向性とは? 
 
つづく