たまにはシンセの話でも…その3

(前回までのまとめ)
元々は巨大で複雑な電子機器であったシンセサイザー。
鍵盤がついて一気に楽器に近づいたが、しばらくすると再び鍵盤がつかなくなりラック音源化が主流となる。
そしてラック音源からPC画面の内部にのみ存在するバーチャルな「ソフトシンセ」に変貌を遂げ……そしてまた再びツマミだらけの鍵盤楽器に戻ってきている。
ソフトシンセまでの流れは常に「コンパクト化」「合理化」がおもなる理由であったと思われる。
 
シリーズ4回目となる今日は、国産メーカーRolandの名器JUPITER-8を具体例にコンパクト化の進化を追ってみよう。(という前振りからわかる通り、どうやら今回も結論にはたどり着かないらしいが気にしてはいけない)
 
JUPITER-8(オリジナルモデル)
1980年発売 定価は98万円と国産シンセではかなり高価だった
 
 
MKS-80(ラック音源モデル)
1984年発売 「SUPER JUPITER」という名前に当時滾ったものだ。厳密にはJUPITER-8のラック音源化ではなく廉価版のJUPITER-6を8音ポリフォニックにしたモノといった方がニュアンスは近いがどれも出音は異なる。尚廉価版とはいえJUPITER-6にしても50万円以上した高級シンセであったし、このMKS-80にしても本体だけで30万円以上した。当時はなんでも高かった。
 
JUPITER-8V(エミュレートシンセ)
2010年発売 今回の連続記事で毎回登場する会社Arturia製のソフトシンセJUPITER-8V。ほぼ完璧にコピーされているが例によって性能は飛躍的に向上している。写真のようだがこれは実在しない「CG」である。定価12,189円とこの中では破格のプライスである。
 
JUPITER-80(新型)
2011年発売 オリジナルブランドからの新ナンバリングとなるJUPITER-80ではあるが、その内容は大きく異なる。実売価格33~34万円と現代では結構な強気のお値段。
 
写真だと大きさが実感できないのでピンとこないかもしれないが、当然シンセサイザー本体というのはデカい。
鍵盤の無骨なサイズ感と重量感は言わずもがなであろうし、コンパクト化されたラック音源MKS-80ですらコントローラーを合わせると6U、ケースに入れられた状態のイメージは「冷蔵庫の野菜庫」ぐらいはありそうだ(笑)(高さ43cm×幅65cm奥行き64cm~)
 
またラック音源は、スタンドに置かれた鍵盤まで移動をして操作するよりも手元ですぐに操作でき、同様の他の音源と合わせて音を作るときにも便利だ。
セッティングにしても電源ケーブル、オーディオケーブル、MIDIケーブルなどがラック内であらかじめ配線されている状態なのでスピーディーでトラブルも少ない。
 

これがソフトシンセJUPITER-8Vになると、物質としてのカタチがなくなり、パソコンの画面内にのみ存在するものとなる。
最近はダウンロード販売がメインなので、もはやインストールディスク1枚としてのカタチすら残らない(笑)
いかに小さくなったかが実感いただけるかと思う。
 
さらにソフトシンセは、本体の物理的な姿カタチが消えるだけでなく、接続するケーブル類も同時に消えることになる。
パソコン内に音を出すシンセがあり、録音機能があり、バランスを調整するミキサーがあり、音を加工するエフェクターまで全てが揃っているのだ。
 
それら全てがケーブルレスでつながっているのである。
よくよく考えてみれば究極の合理化ではないか!
 
シンセの進化だけで考えると「なぜ?」と思える方向性も、全体の流れを追っていくと極々自然なる変化であることがわかってくる。
 
現代はノートパソコンの中に数十台のシンセとスタジオ機材がまんま入っているようなものなのだ。
 
プロレベルでの話となると他にも利点は無数にある。
使用する電源ケーブルやオーディオケーブルの品質によっても音質は変わるし、接続するミキサーやエフェクターを経由すればするほどに音質は劣化していく。
演奏データ用のMIDIケーブルにしても「遅延」が発生し、初期の頃のMIDI機器は20〜30msec(0.02〜0.03秒)ほど発音が遅れていた。
「たったそれだけで?」と思うかもしれないが、秒速340メートルという音の特性を考えると、0.1秒で単純に34メートル離れてしまうことになる。
東京ドームや野外ステージで感じる「あの違和感(ステージを見ている光景と聴こえてくる音のズレ)」は案外小さな数字でも起こるのだ。
 
実際に鍵盤を弾いて発音されるまでの時間は20msecあたりでもう気になりだし、30msecでかなり不快な遅れとなり、50msecはもはや演奏が困難となってくる。
ソフトシンセがで始めた頃はむしろハードウェアよりも大きな遅延が発生していたのだが、コンピューターの進化によって現在は逆転しており、演奏時で3~5msec、プレイバック時は0.1msecという極めて短い遅延時間を実現するまでに至っている。
 
まわりくどい説明になったが、あらゆる音源やエフェクターがパソコンの中のみで完結していくことによって、そういった悩みの種や余計なしがらみが全て払拭されていったのである。
 
これを革命といわずしてなんと言おうか?
 
 
にも関わらず、今シンセサイザーは次の進化、というよりはむしろ退化の方向に戻っているようにも見受けられるのはなぜだろうか?
前回話した「イジっている感がないから」も大きな理由ではあるとは思うけれども、さらなる根本的な理由があると実感している。
それは……
 
いよいよここからが最も語りたい部分となるのだが、ここでまた区切ることにする(笑)
 
次回は「トータルリコールのもたらす光と影」が主な講義内容となるので十分復習をしておくように(笑)
 
…結論に向かって調べ物をしていると、どんどん追加事項が増えていくという悪質金融業者の利息のような状態となっております(^^;
 
読者がいようがいまいが、斜め読みだろうがなんだろうが、つづく!