ズキずきZUKIN

先週このブログで親知らずを抜くことを報告してしまったがために内外から脅されまくった1週間を過ごした。
「やっぱり抜くのやめようかな……」と一瞬ひるんだりもしたが、状況は刻一刻と悪くなっていくだけだ。
ここで逃げてもいいことはなにもない。
「全然痛くなかった」「きっと大丈夫」と励ましてくれる方もわずかながらいてくれたので、ここは前向きに「きっと痛くないさ」と信じ、昨日の正午、予定どおり歯科医に行ってきた。
 
「では早速麻酔からはじめますね〜」
担当の歯医者さんはいつも語尾が伸びる喋り方をする。しかし助手の歯科衛生士さんと話す時は普通にしゃべっているので患者さん向けの喋り方なのであろう。「怖くないですよ〜」というアピールのような気がする。
 
いつもと違ったのは、正面のテレビでフジテレビ「バイキング」を流しっぱなしにしていること、それといつもは静かにクラシックが流れているのに、今日はやや大きな音量でジャズが流れている。
数段階に分かれた麻酔をして「では効いてくるまでリラックスしていてくださいね〜」と一旦治療室から出ていく。
ああそうか、待ち時間を退屈させないようにテレビがつけっぱなしになっていたのか。
 
そしてそこから親知らずの抜歯が静かに始まった。
十分に麻酔が効いているので痛みはないが、感覚はあるのでいま何をやられているか何となくわかる。
みなさんに脅され覚悟をしたことでむしろ楽になれた点があったことは事実だ。
痛みそのものよりも、とにかく力技で押し込まれたり引っ張られたりが激しいのだという前知識が生きた。
どんなに麻酔が効いていても歯茎を切開してその中に治療器具を突っ込んで歯の下にねじ込んでテコの原理でグイグイと大きな歯を抜くわけだ。
怖いので一気に書いてしまったが、どれだけ文明が進歩しても親知らずを抜く手段は大きくは変わらないのだ。
 
と、ここまで観念して臨んでいるのに……やっぱり怖いよう(´Д`)
となるのが歯の治療なのだなぁ……なんて思ったりした。
 
 
僕の親知らずはどの歯よりも大きく真横を向いており、歯茎の中に完全に隠れつつも奥歯に当たって悪さをしているのでまずは歯茎を切開、歯が大きすぎるので何分割かに分けながら少しずつ摘出するしかないらしい。
ドリルで穴を開けているのか回転ノコギリのようなもので切っているのかはわからないが、とりあえずあのキーン!という恐怖のモーター音と歯の焦げるイヤな匂いが漂う。
30分が経過しても僕の親知らずはまだビクともしなかった。
 
それまでは「痛いですか〜?」「大丈夫ですか〜?」と聞いてくれていた先生も、この辺りから口数が少なくなってくる。
助手の衛生士さんに専門用語でボソボソとしゃべっているが、なるべく聞かないようにしていた。
 
神経はまだあちこちで生きているようで治療の合間合間でフェイントのように痛みが走る。
大人としてこれぐらいの痛みはガマンすべきなのか、ギブアップするのが賢明なのか……この辺りのさじ加減がいつも難しい。
 
僕の頭の中はとにかく「痛みを考えないこと」のみ。 
エヴァンゲリオンの「神経回路切断!」という伊吹マヤのセリフと次々と回路が切断していく画面を頭の中に思い描く。
 
大丈夫だ!回路を切断したから痛くない!痛くないぞ!
 
「はい、ピキッとなりますけどビックリしないでくださいね〜」と先生が言ってからほどなくして強い衝撃とパキッ!という音が耳と骨を通して直接頭の中に響き渡る。
 
いてぇ!
 
BGMのジャズアレンジされた「枯れ葉よ」は長い長いドラムソロの最中で、妙に状況とマッチしているのが可笑しくも腹立たしい(笑)
 
そんな繰り返しをひたすら続け、開始から1時間して「はい全部抜けました〜」と言われる。
普段クールな先生だが、額に汗が滲んでいる。
「先生ありがとうございました」が言えない口内状況だったので感謝の視線と念だけ送る。
「ではちょっと休憩してから縫合していきますね〜」と治療室からフラフラと出て行く。
あぁそうか、まだ終わりじゃないんだ。
 
歯科衛生士さんを捕まえてあれこれ質問してみる。
Q.「1時間もかかっちゃいましたけど手こずった方ですか?」
A.「ここまで見事な親知らずにしては早かった方だと思いますよ」
Q.「抜かれる感覚よりも押される感覚の方が多かったのですが?」
A.「抜くための準備がとにかく大変なんです」
Q.「縫合とか抜糸は痛いんですか?」
A.「麻酔が効いているから大丈夫です」
Q.「今晩お酒は飲めますか?」
A.「今日と明日は飲まない方がよいと思います」
 
その後無事縫合も終わり、抜いた後のレントゲンを撮った。
 
キレイさっぱりなくなっているけど……こんな大きな物質がここから消えてバランスは崩れたりしないものなのだろうか?
 
全てが終わってみれば1時間半が経過していた。
個人的にはこれまでの人生の中で最も所要時間のかかった医療行為だろう。(入院経験、大きな手術歴なし)
大変だったけど気分はスッキリ♪
そしてお会計は3,700円。抗生物質と痛み止めの薬で500円。
これがアメリカだったら10万円以上かかるらしい。ビバ日本の健康保険制度。
 

といった内容をササッと書き上げてすぐにブログにしようと思っていたのだが……帰宅後になって麻酔が切れ始めた辺りからくる鈍痛というか……ガマンできなくはないのだけども切なく鈍い痛みがドーンとやってきた。
ズキズキと神経を逆なでするような不快な痛み(>_<)
 
とりあえず抗生物質を飲む。お腹は空いているけど食べるのが辛い。
そうめんを茹でてツルツルッと流し込んで寝てしまうことに。
横になってしばらくして痛みが増してくる。
薬で完全に痛みを抑えることもできるそうなのだが、人間の治癒能力を発揮させるためには痛い方が治りが早い。
その辺りのバイオメカニズムは本当に凄いよなぁと感心しつつも、今日はどうにも思考力が働かない。
あぁやっぱり痛いのはイヤだ!結局ロキソニンを飲んだらだいぶ楽になった。
少々治りが遅くなっても、やっぱり痛くない方がいいに決まっている(笑)
出血も止まらず口の中がずっと血の味だ。
寝てしまおう。痛くないうちに寝てしまうしかない。
 
 
そして翌日である本日。
目覚めてほっぺたをソッと触ってみてゾッとする。
 
めっちゃ腫れとる!
 
鏡を見たら小太り…いやこぶとり爺さん?
ポコンと見事にほっぺたが腫れている。
まるでピンポン球を口に頬張ったかのような見事な腫れっぷりだ。
大変興味深いので写メを撮ってから、昨日もらってきた「摘出した親知らず」を組み立てようと試みる。
頭の中のイメージでは見事に大きな歯が組み上がり「こんな大きな歯が入ってました!」と写真も載っけようかと目論んでいたのだが……想像よりもだいぶ難易度の高いパズルであることに加え、完成後も人様に見せられるようなモノになるとも思えず即却下。
 
先ほど消毒をしに再び歯医者さんを訪れたのだが「かなり腫れてますね〜。でもさらに腫れると思いますね〜。ピークは明日だと思いますね〜」と無慈悲なことを言われる。
「では来週抜糸ですね〜お大事に」あ、お大事にだけ語尾が伸びてなかった(笑)
 
 
ピンポン球をほっぺたに詰めたような顔で思う。
もしも誰かに「今度親知らず抜くんだけど痛いの?」と聞かれたらどう答えようかと……
やはり今回自分が言われて一番印象的だったこの言い回しにしたいと思う。
 
「親知らず。そう、そうなの……しかも下なのね。……グッドラック」