月別アーカイブ: 2017年12月

極上音楽空間

黑ミサTOKYOを観た。
アップするのがやや遅くなってしまったが、至福の2時間半を両日共過ごせた感想を書いてみたい。
 
 
僕はもともとクラシック音楽が好きだ。
幼少の頃に与えらえた「絵本付きのクラシックレコードシリーズ」が大好きで、「白鳥の湖」や「はげ山の一夜」などは特に繰り返し聴いていたことを今でも覚えている。
小中高校生の頃にしても僕はロック少年をやっていたわけではなく、どちらかといえばアニメや映画が好きで自主制作映画をシコシコと作っているような「文化系男子」だった。当然聞く音楽にしても交響楽であったり劇判音楽が多かった。
以前書いたこともあるとは思うが「歪んだギターの音」が大嫌いだった僕のロックのきっかけは「ホラー映画のサントラがロックばかりだったから」だろう(笑)
 
前回のブログ「下積み時代」以降にしても、僕が大きく成長を遂げられたのはアニメ劇判関係の仕事が多かったように思う。
シンセサイザープログラマーという職業をしながらも、中西俊博氏や川井郁子さんなどのソリストの制作を手伝うことも多く、その影響で「サンプリング技術を追い込んだストリングスの打ち込み」だけで別現場に呼ばれるほどに一時期は自分の大きな武器にもなっていた。(その後ギガサンプラー系の出現で圧倒的物量によるクオリティーが自分の磨いてきた技術をたちまち駆逐することを瞬時に悟った)
 
つまり、クラシック楽器を中心に編成された今回のようなコンサートは大好物なんである。
 
「レントゲン」の制作プリプロは、まさに水を得た魚のように毎回の作業が楽しくて仕方がなかった。
非常に手間暇のかかったアルバムだったのでプリプロだけでも半年近くかかっていたのではなかっただろうか?
ロンドンでの本レコーディングには一度も連れて行ってはもらえなかったが(笑)、当時まだ非力だったインターネットの回線スピード事情の中で、TOKYOから修正データを送ったりの後方支援をしていたのが15年以上前の話となってしまうのだから、時の流れというものは恐ろしいほど早い。
 

という最低限のバックグラウンドを知っていただいた上での今回の黑ミサである。
当然レントゲン収録楽曲は思い入れが強い。
今回のラルク楽曲にしてもほぼというか全曲レコーディングに参加しているし、「戦場のメリークリスマス」を見たのは高校一年生の頃、YMO崇拝者の僕が当時はよく意味もわからずに何度も観た映画であることは周知の事実であるし、「DEPATURES」や「VAMPIRE’S LOVE」のピアノの難しさは自分自身が半ベソで練習してきた曲なのでイヤという程知っている。
つまり全曲に対して相当の思い入れがあるのだ。
 
さらに、これはちょっと奇妙に思われるかもしれないのだが、そんな思い入れのある楽曲をお客さんとして鑑賞できるというのは、やはり無責任でとてもよい(笑)。
ただ、同じ曲を演奏した経験がある分だけ、演者の気持ちになってこちらも緊張してしまう心持ちになってしまうのは避けられなかったけれども…(「ANGEL’S TALE」の冒頭から他の楽器が入ってくるまでの十数小節間の一人アルペジオがどれだけ緊張するかをyuki君と語り合ってしまった(笑)
 
それにしてもハイド氏の歌はどこまで広がっていくのだろうか?
引き出しの多さに加えて、引き出しの底の深さが未だに見えてこない。
どこまでもどこまでも漆黒の闇が広がっているのか、あるいは光が眩しすぎて先がずっと見えないのか、いずれにしてもキャパシティ−の予測がまるでつかない。
ヘヴィーなロックサウンドはもちろん、今回のような厳格なスタイルのバックでもたちまち曲ごとに違う自分色に染めてその場を統率してしまう。独唱をすれば紛れもなく空間全体、回線を通して全国の劇場までをも瞬時にジャックしてしまう。
今年のチリライブで世界に伝播したあの感動は記憶に新しいことだろう。
 
時として怖く感じることもある。
音楽の女神ミューズに例えられる方も多いとは思うが、全ての音を支配するモンスター的な凄みも同時に感じるからだ。
 
美しく壮大で圧倒的な力量による演奏と歌のコンサート前半は、ずっと鳥肌がたちつつも、やはりどこか緊張しながら聴いていたのだと思う。
手放しに感動しているのではなくて、全方位に対して鋭敏に音楽を感じ取っているような?
 
 
そしてもう一人の天才、kenちゃんの登場で会場の雰囲気が一変する。
「Hurry Xmas」がkenちゃんの一曲目という曲順も素晴らしかった。
黒とか白といったくっきりとしたイメージの曲たちから、一気にステージが彩り鮮やかな虹色に広がる。
それにしても、僕はこの人ほど楽しそうにギターを弾く人を他に知らない。
楽曲を知り尽くし、ギターを知り尽くし、その上で自分色を存分に出しながら、時にトリッキー、時にクレバーなスケールを行ったり来たりしながらも、気がつけば完璧に着地している緻密なギター。
簡単そうに超絶早弾きプレイをしたかと思えば、一つの音を優しく愛でるようにソッと奏でたりする。
 
HYDEからhydeにチェンジするように、ハイド氏を含めてそれまでの荘厳な雰囲気の会場が“楽しい音楽の時間”に変わっている。
呼吸ピッタリのMCと言ったら語弊があるのかもしれないけれども(笑)、とにかく二人の掛け合いは見ていてとても楽しい♪
 
「winter fall」の意表をつくようなアレンジにドキドキさせられる。
「MY HEART〜」の歌詞と現状が、ハイド氏のみならず自分にもクロスオーバーしてしまい、思わず涙が溢れてしまう。とてもじゃないけど一緒に歌えない。
「forbidden lover」のイントロのスネアロールで制作当時の記憶がフラッシュバックし、間奏のストリングスで再び涙が溢れてくる。
「星空」の舞台装置の美しさと高らかな歌声に歓喜をし、「未来世界」のハイド氏の涙に呼応するように嗚咽が漏れる。ある日を境に、あの歌を歌うと自然に涙が出てきてしまう体質に変化をした僕には、ハイド氏の涙の理由がわかるような気がする。
 
気がつけば終演。全18曲、あっという間の2時間超えの極上音楽空間だった。
 
今年がまもなく終わろうとしているが、こんなにも素敵で素晴らしいステージが今年最後のコンサートとなってくれて本当に嬉しかった。
 
明日からきっとまた頑張れる。
そして来年もきっとまた頑張れる。
 
最高の音楽に幸あれ!