日別アーカイブ: 2018年1月20日

小室哲哉氏のこと

まず最初に正直に申し上げておくと、僕は小室氏のことを実はあまりよく知らない。
何度かお会いしたことはあるといったら決してウソではないのだが、後述するようにそれはあくまでも一方的でしかない(笑)。
つまり事情通といったネタを持ち合わせているわけでもなく、あくまでもほぼ一般論でしか語ることができないのだが、どうしても自分の中で整理をしておきたかったのでまとめてみることにする。
 

 僕が最初に小室氏に(一方的に)お会いしたのは1986年、YAMAHAのシンセサイザーのイベント「X-DAY」のゲストとしてTM NETWORKが生演奏をするというのを“ついで”で見たのがきっかけだった。
ちなみにその当時の僕のお目当は「カシオペア」の向谷実氏と、「うる星やつら」の安西史孝氏のタッグによる国産初となる16bitサンプリングマシン「TX-16W」のお披露目イベントだったのだが……
向谷氏はステージ上で「いかにこの機械の操作が困難でバグだらけで言うことをきかなかったか」といった不満をさんざんぶちまけ、「おかげで数日徹夜で寝られてません」「こんなものはまだ商品にしちゃいけない」と愚痴を聞かされるだけのさんざんなイベントとなってしまった(;^_^A
 
当時の僕は女の子がキャーキャー騒ぐようなミーハーなバンド許すまじ!ぐらいに思っていた由緒正しいただのシンセオタクでしかなかったので……当然既にかなり流行っていたTM NETWORKのステージにも懐疑的な姿勢で臨んでいたことも正直に記しておく。しかし、
「むぐぐぐぐ……なんだこのキモチイイサウンドは?(-“-)」
と一瞬でグイグイと引き込まれてしまったことも正直に記さねばなるまい。
後に「FENCE OF DEFENSE」として枝分かれしていく技巧派サポートメンバーの演奏もさることながら、とにかくカッコよかったんである。
ストレートに迫力があり歌がありキャッチーなメロディーがある。
実のところマニアックかつ実験的なシンセサイザーミュージックが多かった当時、自分にとって初めての経験だったのだ。
 
(X-DAYのTM NETWORK)
 
次に僕が小室氏に(一方的に)お会いしたのはまたもやYAMAHAのシンセサイザーのイベントで、今から思えば贅沢すぎる30人程度の少人数セミナーになぜか自分も参加できていた。
「あ、10円玉が落ちてる」とステージで10円玉を拾った小室氏が今でも目に焼き付いているのだが、具体的なイベントの名称までは思い出せない。
当時小室氏がサポートをしていたEOSというYAMAHAの初心者向けシンセサイザーのイベントだったかとは思うのだが、なぜ自分がそこにいたのかも今となっては全く思い出せない。
 
 
それからさらに数年が経ち、世の中は90年代。
僕はようやく音楽業界の片隅でなんとか食べられるようになっていたわけだが、いよいよ伝説的な小室プロデュースの、“あの時代”がやってきたということになる。
当時の音楽業界に生きていた人間は、漏れなくあのムーブメントを至近距離で目撃していたようなものだった。
もはや都市伝説としか思えないようなデタラメなセールス記録が次々と打ち立てられていく。
 
当時の坂本龍一氏と小室哲哉氏との対談内容は今でも忘れられない。
「日本で最高のプロデューサーはあなたですよ」といった切り口の坂本氏。
小室氏にしてみれば、自らに多大な影響を与えたであろうYMOメンバーの坂本氏に、あの世界のサカモトにそんなことをまず言われてしまい、僭越ながらも想像するならば、さぞや返答に窮したのではないだろうか?
だけども続く坂本氏の発言が実に興味深い。
「『100万枚売ってください』というニーズに『はい』と答えて実行できたのは日本ではあなただけなんです」
的なことを、坂本氏はその対談で語っておられたのだ。
「僕の作る音楽はね、枚数的にはそこまで売れないんです。つまり(どれだけ輝かしい賞を獲得できたとしても)商業音楽として見るとなかなか難しいんです」ともおっしゃっていた。
これは今から数年前の中田ヤスタカ氏との対談でも同じようなことを語られていた。
 
 
「masquerade」という曲をご存知の方は多いだろう。
138万枚の大ヒットとなったTRFの代表曲の一つだが、「レーラーシbー」というサビ始まりの“あのコムロ節”を象徴するかのようなフレーズには、未だに音楽業界の伝説として語り継がれているエピソードがある。
 
 
当時エイベックスでの新曲会議で小室氏はその一小節のみ「マスカーレイド♪」と口ずさんだそうなのだ。
そしてその一小節のみのプレゼンにも関わらず、満場一致で「それでいきましょう!」といったゴーサインが出たというお話なのだが……細部に差異はあろうけれども、多分限りなく本当のことなんだと思う。
あえて裏を取らずちゃんと調べもせず、当時の音楽業界の空気感の記憶だけなのだが、それぐらい「TK時代」とは最強だったのだ。
 
当時の小室氏は「日給1億円」とも言われていた。
経済効果300億円となると、確かに冗談抜きでそういった皮算用をする人も多かったことだろう。
 
もう一つ覚えている当時の記憶なのだが……globeが3週連続でシングルをリリースし1,2週目と当たり前のようにオリコン首位をキープし続けていたわけだが、3週目で首位を取ったのが……L’Arc-en-Ciel「snow drop」だったのは1998年10月17日のこと。
当時既にラルクのスタッフだった自分が「おおおお!!!」と狂喜乱舞したことを覚えている。
 
 
スポ根ドラマじゃないけれども、まさに「強敵」と書いて「友(ライバル)」だったのだろう。
そんな彼らが20年の時を経てコラボを実現させたりしたのも、まさに最高の好敵手だった歴史があったからなのだろう。
 

 
今回の報道の中、小室氏の会見内容が文字に起こされていたので全文を読んでみた。
 
「あ、全部これ本当のことだ」と直感できた。
この人の言ってることに一切の嘘偽りはない。
そう信じられる。確信できる。
政治家や官僚のしている苦しい言い訳やウソとはまるで違う。
 
小室氏の判断というか、引退という方向性もなんとなくではあるけれども理解はできる。
 
だけども、今回の騒動をきっかけに社会がちょっと変わってくれたらいいな……とも思う。
 
プライベートの全てを非人道的手段で暴かれたら、清廉潔白の人間の方が少ないことだろう。
誰しもが皆それぞれ知られたくない過去や現在を背負い、多かれ少なかれ闇を抱えて生きている。
 
閻魔大王に見抜かれる罪状…例えばウソをついただけでも舌を抜かれるといった厳しすぎる判定基準で考えると、現代人のほとんどが地獄行きはまぬがれまい。
 
本来ならば当事者の内で収めるべき問題を第三者が世間に吹聴して回り、積み上げた人生を破滅に追いやりお金を稼ぐ。
閻魔大王様!そんな人の舌こそ抜いてくださいませ。
 
……と最後は閻魔様にお願いするというよくわからない展開になってしまったが、こんなことで大いなる才能や音楽の芽を摘んではいけないと思う。
 
ほとぼりが急速に冷めること、引退宣言など堂々と撤回し、一日も早い復帰を切に願っております。