不気味な童話たち

子供の頃の強烈な記憶というものはいつまでたっても忘れられないものだ。
ふと自分の中にある「怖いもの見たさ」の本質というか、キッカケのようなものを考えていたら、数冊の絵本や童話に行き着いたので今日はそれらを紹介してみたい。
 
 
ずっと心の奥底に引っかかっていた童話がある。
作者が誰だったか思い出せない。
ただただ不気味な世界観だけを覚えていた。
 
ナメクジがトカゲを治療するふりをしながら食べてしまう強烈な光景が脳内に焼き付いている。
「なんだか足がなくなったようですよ」とか「お腹が熱くなってきました。もうやめてください」と懇願するトカゲを「ハッハハ。なあに大丈夫ですよ」とかなんとか言いながらお腹や心臓を溶かして食べてしまうナメクジの描写がどうにも不気味なのだが、僕はこの童話を小学生の頃に教科書で読んだのではなかっただろうか?
 
ちょっと検索をしてみたらそれがすぐに宮沢賢治の「蜘蛛となめくじと狸」であることがわかった。
早速数十年ぶりの再読となったわけだが、この童話の不気味さを改めて認識したというか……子供の読み物としてはトラウマ級の凄まじさなんじゃないのか?とすら思った。
現在青空文庫で無料、内容的にも10分程度で読めるので、ぜひこの不気味な世界観を共有していただけたらと思う。
 
 
日頃の僕が勧めているようなB級ホラーとは違い、日本文学界が誇る文豪の作品なので、例え読後感想が最悪だったとしても文句を言われる筋合いはない(笑)。
 
(「洞熊学校を卒業した三人」は推敲された改定版。僕を含めたほとんどの人は過去にこちらを読んでいるそうだ)
 

この「蜘蛛となめくじと狸」よりもさらに不気味な印象だけが残っている絵本がある。
「ブレアウィッチプロジェクト」やMナイトシャマラン監督作品以上に明確に「森に入ってはいけない」という内容だけを訴えた絵本で、幼い兄弟が森の中で巨大な芋虫やわけのわからない生物に食べられそうになり逃げ回る話だ。
 
命からがら森から脱出できるのだが、振り返ると森の中でそれら不気味な生き物が蠢めきながらこちらをジッと見ているという身も蓋もなく解決策のない恐ろしい話だ。
こちらはかなり真剣に検索をしても作品を特定できない。
もしご存知の方、あるいはピンときた方がいたら是非とも教えていただきたいと願う。
 

 
そして僕の中では児童推薦書の定番「おしいれのぼうけん」以上にドキドキワクワクさせられつつも、やっぱり相当な不気味さを持った児童書だと思うのが「うちゅうせんにのるな」だ。
作者は「転校生」の原作者の山中恒氏。コミカルな要素などもあるにはあるのだが、とにかく怖い。
 
 
主人公の少年タカシがお母さんと大げんかをして家を飛び出すと、カタカナしかしゃべらない外国人のおじさんが「オメデトウゴザイマス」と話しかけてくる。
チューインガムの懸賞に当選したので宇宙旅行に行けるというのだ。
そして今すぐ団地の屋上から旅立てるらしい。
家に戻りにくいのもあってタカシは言われるがまま団地の屋上から宇宙船に乗ってしまう。(児童書というものは基本的に展開がとても早い)
クリーム色の壁の宇宙船内、窓からは離れていく地球が見えるのだが、あまりに現実感に乏しくあっけない。
思った以上に退屈な宇宙旅行は眠気を誘い、いつの間にか眠ってしまったタカシが次に目覚めた時には、もう地球がどんどん近づいてきていて元の団地の屋上に戻ってきてしまう。
夢だったのか騙されたのか納得のいかないまま家に戻ると、さっきまで怒っていたお母さんは大好物のハンバーグを作って待っていてくれた。
いつもは不機嫌なお父さんもニコニコしているのだが、大嫌いなイカの塩辛をムシャムシャ食べているし、会話も雰囲気もいつもとちょっと違う気がする。
なんか変だ。お母さんもお父さんもやさしいのだけども、なにかがおかしい……
 
「いつもと同じ日常のはずなのに些細な部分に感じる違和感」だったり「親しいはずの人が他人のように思える瞬間」といった、よくよく想像してみると結構な恐怖感が子供向けの読み物でありながらも存分に描かれており、同じテーマで相当怖いホラー小説に昇華させることが可能だろう。
 
宇宙船は地球に戻ったのではなく地球とは別の星に人間をさらっていたことが後半になってわかるのだが、それが見えてくるまでの微妙な違和感や雰囲気、主人公の不安な感情やお父さんやお母さんが別人にすり替わっていたことがわかった瞬間の恐怖感など…僕の中で特A級の怖さとして記憶に残っている作品だ。
 
入手の難しい絶版本なのでそれこそ数十年前に読んだきりなのだが、図書館に行けばあるいは再読のチャンスを得られるものなのだろうか?調べてみよう。
 

そして「最も救いのない絶望的内容の絵本は?」と、もしも尋ねられたら、
即答できる絵本がある。
(宮部みゆき原作の「悪い本」も相当怖いのだが…これはフェイントである(笑)
 
やはりここは「ねないこだれだ」にとどめを刺す。
 
 
夜の9時になっても寝ないような悪い子はおばけが連れ去ってしまうよ〜というシンプルな内容なのだが、普通こういった子供向けの読み物は救済措置のように「だから早く寝ないとだめなんだよ」的なエピソードがあるものなのだが……
 
このお話に限ってはおばけがやってきて自分もおばけにされてしまって手を掴まれおばけの世界に連れ去られてしまい、そこで話は終わってしまう。 
 
もはやこの絵本を読んだことのない日本国民もいないのではないか?
というほどに有名な絵本ではあるが、冷静に考えてみるとこれほどの恐怖もないのではないだろうか?本当に救いのないお話なんである(^^;
 
尚Googleの画像検索をかけてパロディー作品でゲラゲラ笑って恐怖を中和させてはいけない。
 
 
いろんな本を紹介させてもらったが最後に主旨を今一度言っておく。
宮沢賢治の「蜘蛛となめくじと狸」を是非読んでみてね(^^