低予算映画の魅力とは?

なんなら今回のタイトルは「ゾンビを語る・4」でもよかったのだが……
 
ネタバレほぼ一切なし宣言!
「カメラを止めるな!」を見てきた。
 
 
僕の周辺のゾンビ愛好家は元より、ゾンビ関係者のTLから日々波状的に流れてくるオススメ作品としての絶賛の数々がずっと気にはなっていた映画ではあったのだが……
そうこうしているうちに口コミがどんどん広まってゆき、最初はほぼ単館上映のような状態から、8月10日現在で全国120館を超える勢いで上映館を拡大し続けている前代未聞のインディペンス映画だ。
 
昨日地元駅前店で一緒に飲んだ某メーカーディレクターさんに「仁さんともあろうお方がまだ観てないとは思いもよりませんでしたよ……いや驚いた」とトドメともなる最大限の挑発をされ、なんとしても今日中に観なければ!と都内の上映スケジュールを当たってみるも……ぐぬぬぬ、新宿も六本木も昼から夜まで既に満席だとぉ!
 
これは一体どうしたことか!?
もはやカルト人気では済まされない状況。
ハッキリ言って「ミッションインポッシブル」以上の盛況ぶりではないか!
対予算比率にして500倍ぐらいの差があるのにですぞ!?←下世話やのぉ
かくして都下に目を向け上映館を検索し直し、TOHOシネマズ南大沢5番スクリーンにて無事鑑賞することができた。
 
 
ところでこの映画「カメラを止めるな!」だが……とにかく面白かった!
 
最低限の情報として「ゾンビ映画」ではあるのだが、それ以上の情報は必要ないし知るべきではないし、実のところゾンビ映画好きである必要もほぼない。
 
もう一つだけ知っておくべき情報があるとすれば、この映画が「超低予算映画」であるということだ。
予算は300万円未満であるらしい。
 
 
低予算映画を賞賛するつもりは全くない。
なぜなら低予算映画の大部分、それこそ99%は駄作でしかないからだ。
だがしかし100本の中の1本ぐらいの打率で、キラリと光る作品が出てくる。
「出す」のではない。「出る」のだ。←
 
 
僕はこれまでにもこういった切り口でホラー映画を絶賛→肯定→説得→洗脳、といった手順を経て、多くの人にホラー映画を見てもらっているわけだが、本当に凄い監督の力量というのは「ふんだんに当てられた予算」では埋もれてしまう場合が多いようにも思う。
スピルバーグやキャメロンのようなプロデュース能力にも長けた大御所ならば、200億円のお金の使い道でも自在にこなせる能力があると思うが、ともすれば潤沢な予算に才能が隠れてしまう場合だって多々起こることもあると思うし、逆を言えば“乏しい才能を潤沢な予算で覆い隠すこと”だってできてしまうことだろう。
近年の「なんだかなー」といった感想しか抱けないようなハリウッド佳作アクション映画の大部分がこれに当てはまるようにも思う。
(更に言えばスピルバーグにせよキャメロンにせよ「Eyes」や「殺人魚フライングキラー」といった低予算ホラー映画経験があり、同じくして突出した才能を知らしめた経歴もある)
 
「ゾンビを語る・3」http://jinxito.com/2016/02/18/zombie3/
 
この辺りの過去のエントリーでも触れていることなのだが、低予算名作映画の真髄とは「にも関わらず面白い」という結果を作り出した若き監督の才能が浮き彫りになるということ。
 
・有名な俳優は使えない
・派手なアクションはもちろん、メイクやCG、スタジオ撮影すら満足にできない
 
こういった低予算という負の要素をプラスと捉えることによって、何が生まれてくるだろうか?
 
・名優の演技ではなく、俳優のガチ演技
・とにもかくにもアイディア
・極限まで削ぎ落とした惑わされない映画表現
 
虚をつくようではあるが、剥き出しの才能や感性をさらけ出すことになるのではないだろうか?
 
そしてこういった限定条件の中で面白い映画を作ろうと思ってもかなり範囲は狭まってくる。
 
少なくとも……
・ジェット戦闘機が大活躍する空軍のエリートと美人教官の色恋沙汰
・遥か昔遠い銀河の片隅で起こるSFスペクタルサーガ
・豪華客船の出港から沈没までをリアリズムたっぷりに描いた恋愛映画
・世界規模でベストセラーとなった魔法学校小説究極の映像化!
・巨大不明生物が大都会東京で破壊の限りを尽くす怪獣映画
・オールスターキャストが泥棒劇をまんまと成功させる痛快アクション映画
 
といった内容を300万円で作ることは不可能だろうし、仮にできたところでショボいだけだし傑作になる確率は限りなくゼロでしかないだろう。
 
そこでゾンビ映画なんですよ!
 
ゾンビ映画の99%が駄作であるという推論は、おそらくそこまでの暴論でもなければ大きく間違ってもいまい。
むしろ「知られざるゾンビ映画」の数を思えば、もしかしたら99.9%が駄作なのかもしれない。(それはそれで面白いのだけども楽しめるのは一部のマニアだけだ)
 
一方でゾンビ映画の設定は公平だ。
「バイオハザード」や「ワールドウォーZ」のような100億円規模の巨額を投じたゾンビ映画もあれば、10万円以下で作られたような短編映画だって存在する。
どちらも同じ「ゾンビ映画」ではあるのだが、時として10万円の作品が100億円の予算よりも明らかに「素晴らしいゾンビ映画」となり得てしまう。
そこがゾンビ映画の凄まじいまでの懐の深さであり恐ろしさでもある。
 
低予算映画である必要はないが、少なくともゾンビ映画に関してはそこまでの予算を投じなくても、アイディア一つで面白い作品を作ることはできるはずなのだ。
 
少なくとも僕は超大作の「ワールドウォーZ」よりも、7分程度の超低予算短編「CARGO」の方が、ゾンビ映画としては圧倒的に好きだ。
 
 
イコールコンディションとは対照的、オーソドックスだろうが低予算だろうが反則しようが何しようが、「面白いゾンビ映画を作ったものこそが勝者!」というフェアなルールの中で競われているジャンルだと言えるだろう。
そう、あくまでもホラー映画やゾンビ映画は公平なのだ。(再)
 
今では大家としてハリウッド映画界に君臨している多くの映画監督は、若き日にゾンビ映画もしくはそれに準ずるホラー映画でデビューしたという経歴がある。
前述のスピルバーグやキャメロンをはじめ、「スパイダーマン」のサム・ライミ監督も、「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソン監督も、「スーサイド・スクワッド」のザック・スナイダー監督も、その他多くの名監督が「若い頃にゾンビ映画もしくは低予算ホラー映画で逸脱した才能をフィルムに定着させ、のし上がり名を馳せていった名監督たち」なんである。
 
 
「超低予算ホラー映画」というと、やはり僕の中では「死霊のはらわた(1981)」「CUBE(1997)」「ブレアウィッチプロジェクト(1999)」「SAW(2004)」あたりがポンポンと出てくる。(近年のホラー映画は不勉強で申し訳ないが「パラノーマル・アクティビティ(2007)」あたりは自分の琴線にはあまり触れないようだし、「死霊館」とか「インシディアス」あたりは言われているほど低予算の印象もない)
 
その中でも「CUBE」という映画の突出した低予算ぷりには震えさせられた。
 
 
映画の舞台(セット)は「一片が4.2メートルの正方体の部屋が二つだけ」なんである。
たったそれだけ。
“今いる部屋から隣の部屋に移動する”をひたすら繰り返すだけの映画なのだ。
だが、面白い!
 
むしろこの映画は余計な状況設定を一切排除し、それだけにしたことによってアイディアが突出することになった。
1997年作品ではあるのだが、未だに定期的に見てしまう魅力的なホラー映画だ。
CGの使い方などが今となってはチャチに見えなくもないが、そんなことは無問題と思えるほどにアイディアがただただ素晴らしく、またこの単調なセットの繰り返しの閉塞感をも世界観として見事に封じ込めている傑作だと思う。
(この映画も単館上映から火がついた作品だ)
 
 
「カメラを止めるな!」は、そこまでの閉塞感はないにせよ、ほぼオールロケの半径50メートル以内での出来事を描いている。
96分中の本編の37分の時点で衝撃的な事実が発覚するのだが、パンフレットのインタビュー記事を熟読していてさらなる衝撃的な事実を知ってしまった。
 
えええええ!!本当にぃぃぃぃ?
ガチで?まじなの?
 
映画的な手法としても、恐るべきトライを本当に実行しているようなのだ。
真偽を確かめにもう一度劇場に行きたくなってしまうような事実が、ドキュメント性をも含めて映像として立証されているらしい。
いやいやいや、これはやっぱりもう一度最初から「ガン見姿勢」で見直したい映画だ。
 
ゾンビファンはもちろん、全ての映画好きにオススメしたい内容だ。
尚、ゾンビ映画としてのスプラッター描写はかなりマイルドというか……えーとあのその、最高っす!
 
そして誤解なきように言うならば、、、この映画は三谷幸喜映画に匹敵、いやもしくはそれを凌駕するほどに大爆笑できることもまた約束された事実なんである。
え?ゾンビ映画なのに大爆笑?それってどういうこと?
と思ったあなたは観るしかないと思うし……
 
絶対もう一度観ないと気が済まない!