ホラー映画とコメディー映画

「ラヂオの時間」
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1997年、三谷幸喜の第一回監督作品である本作。
今から21年前、周囲の評判の良さに劇場に足を運んだ作品であった。
当時の邦画は今ほどの勢いがなく、個人的には伊丹十三監督作品が大好きぐらいだったように記憶しているが、「映画館で観てよかった!」と心底思えた映画であった。
数年に一度の割合で見返す映画ではあるのだが、何度見ても文句なく面白いと思える傑作映画だ。
 
「ラヂオの時間」は元々は舞台上のお芝居を映画化したものであり、後の三谷映画のスタイルを第一作にして既に確立してしまった名作コメディー映画である。
練り込まれた脚本の素晴らしさは何度見ても惚れ惚れとする出来栄えだが、名優たちの若き姿を今このタイミングで見られる楽しさというのは、新たに加わってきた要素、追加された魅力となるのだろう。
唐沢寿明、鈴木京香、渡辺謙などの21年前の姿、また梶原善、田口浩正、小野武彦、近藤芳正といった三谷映画を固めるお約束の名脇役陣を見るのも楽しい。
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コメディー映画とホラー映画ほど満員の映画館で観たときの幸福感を感じるジャンルもないだろう。
コメディー映画での自分の笑いと劇場内の他のお客さんが完全一致したときの爆笑、ホラー映画のショックシーンでビクッ!とひるんだ瞬間と劇場内の他のお客さんのビクッ!が完全一致した時の連帯感、、、
芽生える感情は実のところどちらもほぼ同じだと思う。
 

「エルム街の悪夢」という映画を観たのは忘れもしない1986年6月1日。
「映画の日」という今ではすっかり慣習化された毎月1日のサービスデイも、当時は6月と12月の年2回に限られたイベントであった…と思う。(追記:元旦と3,6,12月の年4回であったらしい)
今ほど娯楽の多くなかった時代、たいていの映画の日は何かしら映画を観ていた学生時代であったし、周囲の他の人にしても「この日に映画を観ないのは損」ぐらいに思っていたのだろう。
映画の日の映画館はどこも満員御礼であった。
ホラー映画を満員の映画館で観た機会というのもそうそう多くはないのだが、「エルム街の悪夢」の上映中、当時の銀座ニュー東宝シネマ2劇場内でちょっとしたことが起こった。
ゆるやかに傾斜をしている劇場内の後方からジュースの缶がコロコロと転がりだしたのだ。
折しも映画のストーリーは夢の中に出てくる殺人鬼フレディーの存在がチラチラ垣間見えているシリアスでとても静かなシーン…だったので、劇場内にいたお客さん全員が画面を見ながらもコロコロコロ…という音に聞き耳を立てる。
特に加速するわけでもなくのんびり転がり続けたジュースの缶は前列の前まで転がり続け「ココンッ」とスクリーン前の段差にぶつかって止まった。
ただそれだけのことだったのだが、全員でその挙動に聞き耳を立てていたことにクスッと小さな笑いが起こった。それぐらいコロコロという音が劇場に響くような静かなシーンだったのだが、その直後に「ババーン!」というショックシーンが!
その瞬間、劇場内で「ビクッ!」という反応、反射的に出てしまう「ギャッ!」という短い悲鳴で完全にシンクロしてしまったお客さん全員、自分も含めワンテンポ置いての爆笑となった。
照れ笑いというか、偶然の産物で生み出された一体感に笑ってしまったのだろう。
その後の上映時間は、人生において一度きりと思われるような楽しい映画鑑賞となった。
劇場内の観客全員が心を開いての鑑賞となり、まるでジェットコースターに乗っているかのような大合唱の悲鳴や笑いが最後まで続いたのだった。
 

「カメラを止めるな!」をここでまた猛烈にプッシュするわけではないのだが(いやするのだけどもね(笑))、なにかこの「エルム街の悪夢」を観た時の経験に近い笑い方のできる映画だと思う。
劇場内での一体感、連帯感、共有感のようなもの?
全てのコメディー映画やホラー映画で感じられるわけではないこの感覚を確実に味わえる映画。
しかもそれが予算300万円で作られたインディペンデンス映画でゾンビ映画で異例の拡大上映をし続けている映画だというのだから、やはり今年度最もインパクトのある映画となるのだろうなぁ…
 
自分が70歳になった頃に「2018年は台風や地震があって大変な年じゃったが『カメラを止めるな!』という映画があってのぉ…ゴホッゴホッ」とか言ってるジジイをやってる気がする(笑)。
 
そして…「カメラを止めるな!」をご覧になったみなさんには是非冒頭で紹介した「ラヂオの時間」をオススメしたい。
上田監督が「影響を受けた作品」として挙げられている作品でもあるのだが、今回改めて見直してみて様々な共通点を見出すことができた。
このちょっとした感動をさらに共有できたらと思う♪
 
※さらに追記:「エルム街の悪夢」は名優ジョニー・デップのスクリーンデビュー作でもある。ベトナム戦争映画の名作「プラトーン」にも出ているが、セリフや役どころとしてオイシイのは圧倒的にこちら♪